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グートルーン あらすじ/1

ジゲバントの結婚とハーゲンの冒険物語



※この物語に登場する地名は特定されていないものが多く、特定されているものについても不確かな部分がいくらが含まれているので、特徴的に登場する地名について色を変えてみました。

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物語は主人公から遡ること2代。グートルーンの曽祖父にあたるジゲバント誕生から始まります。

むかーしむかし、アイルランドに、ゲール王とウーテ(ウオテと同じ)王妃というご夫婦がおりました。
このご夫婦にはジゲバントという息子さんが生まれました。ジゲバント王子は国の跡継ぎということで、王子として相応しい教育を受け、立派に成長。そののちゲール王はなくなり、ジゲバント王子が順調に国を継ぎました。
いつの時代も、母の関心というのは同じもののようで、夫をなくした先王妃様は、息子がいいお嫁さんをもらって、はやく孫の顔を見せてくれやしないかと思うようになりました。
と、いうわけでさっそく嫁探しが行われ、ノルウェー(フリーデショットラント)の王女がジゲバントの妻として迎えられることになりました。この幸せなカップルのもとに誕生するのが、一人息子、ハーゲンです。
ハーゲンは子煩悩な両親に、大切にされてすくすくと成長していきました。

そんなある日。
「あなた。なぜ宴を開いて騎士たちを戦わせないのですか。どんなに富んでいても、それを分け与えなければ意味がありません。」
何を思ったのか突然の王妃の発言によって、王は、武術大会を開くことになりました。「女の強気によって道狂わされる」ここの王家の災難の始まりです。
武術大会ったって、円い闘技場で一騎打ち、じゃないですよ(笑)。 この時代のトーナメントだったら、たぶん四角く区切った原っぱでしょう。宴を開き、集まった各国の騎士たちに贈り物をバラまくことは大いなる誉れ、王の評価にも繋がるもの。そして、この武術大会を通じて、宮廷に仕える女性と、騎士たちとが知り合うという出会いの場でもありました。武術大会というのは、戦うのが好きだろうが嫌いだろうが、やらなゃならない行事みたいなものです。
王は早速、この提案を受け入れることにしました。
「それでは、国中に使者を送り、宴会の手はずをととのえよう。」
各国に使者が送られ、主要な騎士たちに打診します。

 …と。そんなわけで、いよいよ宴会の日。(サクサク進みます)

この時代の宴は、何週間、場合によっては何ヶ月も続くものでした。騎士たちが雄雄しく戦う華々しい宴は何日もつづき、やがて十日目。
 この日、たいそう腕のよい吟遊詩人が城にやって来ておりました。吟遊詩人は、それはもう、ハーメルンのヴァイオリンひきの如く人々を魅了します。(この時代の吟遊詩人といえば、「ニーベルンゲンの歌」のフォルケールと同じく、ヴァイオリンかフィーデルか、弦楽器を手にしていた可能性が高い)
しかし人々は、あまりにも夢中になりすぎておりました。
なんと王子のハーゲンをほったらかしにして芸に見とれてしまったのです。そのスキに、通りかかったグリフィンが子供をひらりと!
ああ、なんということ。攫われた王子は遥か、空の上。
その城には、鳥を射落とせるヴェルンドの弟エギルみたいな立派な射手は、いなかったのです。
ひとり息子を失った王妃は嘆き悲しみ、宴は終わりになり、人々はみな去っていきました…。
(その吟遊詩人は一体、何者だったんだ? 何故、誰もツッコミ入れないのか。)


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けれど、攫われてしまった幼いハーゲンは、両親の悲嘆と裏腹に、実は、まだ生きておりました。
着いた場所は孤島にあるグリフィンの巣で、若いグリフィンたちが、それはもうヒナ鳥のようにぴーちくぱーちくと生餌を待っていたのですが、危ういところで脱出成功。
幸いだったのは、グリフィンたちが、まだあまりお腹がすいていなかったということ。爪とくちばしに危ない目にあわされながらも、ハーゲンは、生き残ることが出来たのです。

ところで、この島にいた人間は彼だけではありませんでした。
別のグリフィンたちが攫ってきた3人の王女もまた、グリフィンたちの爪を逃れて、隠れ住んでいたのです。
(なぜ王女なのかって? それは、中分不相応の恋愛は好ましくないと思われていたため、主人公に絡む女性はすべて高貴でなくてはならなかったからですよ。世騎士文学では、清清しいほど一般民は出てこないんですねぇ…。)

…見方を変えると、この島に住んでいるのは、実は、王族ばっかり攫う不自然なグリフィンたちだってことに。
うむ、まあ突っ込んじゃいけないのでそのまま進みます。理由の説明とかないし。


ハーゲンは、乙女たちの言葉から、彼女たちが自分と同じキリスト教徒であること、今はやつれ、汚れていても高貴な身分であることを知り、たいへん喜びました。少女3人、男1人、まるでどこかのファンタジー小説のようですが、ひとりで放り出されるより、ずっと心強いですよね。
4人は力をあわせ、恐ろしい化け物の目から隠れながら、細々と草や木の実を食べて逞しく生き延びました。
サヴァイバルする王子と姫。(笑)

そんなある日、島の近くで聖地巡礼に行く途中だった船が難破して、武装した、ひとりの男の死骸が浜辺に流れ着きました。鎧も剣も弓矢もあります。
ハーゲンはこの武器防具をはいで自分が身につけ、さっそくグリフィンと戦う準備を整えました。
これだけサヴァイバルしてれば、そりゃもう体力バッチリですよ。攫われたときはまだ幼くて、騎士としての修行も積んではいなかったけれど、そこはもう、古代の英雄のごとく「美しくなくとも力まかせ、殴って殺せ」状態。
グリフィンたちは次々襲い掛かってくるのですが、ハーゲンはなんのその。グリフィンの一族郎党を皆殺し。
グリフィン・スレイヤーです。

天敵がいなくなったお陰で大手を振って島を歩けるようになったハーゲンは、今や恐れるものなど何もありません。手に入れた武器で獣たちを倒し、肉をたっぷり手に入れて、乙女たちに焼かせ、たっぷり食べることができるようになりました。栄養満点、もうツヤツヤ
さらに彼は、余った体力で、戦いの腕を我流で磨きはじめました。

ところで、森の中でハーゲンは、不思議な生き物に出くわしたことになっています。
原典では、ガビローン(gabilûn)。ヴォルフラムの「パルチヴァール」でベルターネの騎士の紋章として登場するガンピルーン(gampilün)と同じ生き物です。
これ、ドラゴンていうか、カメレオンかもしれないという説もありますが、今のところ正体は不明。しかも原典では、ガビローンによく似た動物だった、と書かれている様子。
ガビローンでさえ何なんだかわかんないのに、さらにそれに似た生き物ってどんなですか?
…不思議な生き物です。

出会い頭、ハーゲンはいきなりコイツに戦いを挑みかかりました。狩りの途中だったので、ついでなんでしょうか。ガビルーンっぽい=ドラゴンみたいなもの=敵。(おいおい。それでいいのか王子様。)

なんだかよくわからないうちに倒したあとは、皮を剥いで衣服等に利用します。肉はみやげ用。血は運動後の飲み物として、その場で消化。
と、そのガビローン「のようなもの」の血を飲んだとたん、ハーゲンにはモリモリと力が湧き、頭の中にたくさんの知恵が湧いてきたのです! このへんはもう、ニーベルンゲンの歌からヴォルスンガ・サガから、色んな物語に登場する「お約束」ですね。
ドーピングする王子と姫(笑)

ちなみにこの話では、竜の血で不死の体になるとか、心臓食って鳥の声が聞こえるようになるとか、そういう展開は無いのです。ただ単に、元気になっただけ。ザコ竜(パチもん)だと、やっぱ食べたあとの効果も大したことが無いのでしょうか。
さらに唐突に現れたライオンを手なづけてみたりして、色々と武勇伝も満載ですよ。


 と、いうわけでレベル上げも十分になりました。
 あとは国へ帰るだけ。いざ! 海岸へ。帰国クエストに挑戦DA!
 通りすがりの船を見つけたハーゲンは、さっそく大声で呼び止めるのですが…。

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