アイスランド・サガ −ICELANDIC SAGA

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巨人族の外見について



 北欧神話を知ろうとする人々の間で、よく議論に出される話題が、これ。
 「巨人族はどんな外見をしているのか」。…確かに、気になるところではある。

 神々について言えば、外見の表記は、まあ、それなりに登場する。大抵は「美しい」と書かれる。当然といえば当然かもしれない。人間の味方のほうが「美しい」。美しきものは良きものである、という単純な理由もあるだろう。
 ならば逆に、人間の敵である巨人族は醜いことが多いのか。もちろん、その通り。神々の敵対者として現れる巨人は、醜くおぞましい存在として描かれることが多い。「ヒュミルの歌」に登場するヒュミルなどが、その代表的な例である。

 だが、”人間の敵ではない”巨人については、この限りではないようなのだ。

 フレイが一目ぼれする、巨人族の娘ゲルズは非常に美しく、白い腕を差し上げると輝くように見えたという。また、巨人族出身のロキは、性格は悪いが姿は美しかったとされる。 
 ここから考えるに、神や巨人の容姿とは、種族ではなく、味方=美しい、敵=醜い、と、立場によって変わるものとするのが妥当なようだ。
 ご都合主義的な外見の設定だが、実際、神話や物語とはそういうものだと思う。誰だって普通は、美しいものに好意を抱くものだ。


 ところで、巨人族とはそもそも、どんな種族だろうか。
 神とは呼ばれないが、神々に匹敵する能力を持っている。時には神々の能力を凌駕することすらある。
 そして、敵対者と呼ばれながら、中にはアース神族との婚姻や誓いによって、神に仲間入りすることがある。

 実は、巨人族とは一つの種族の名前ではない。
 トールはよく巨人族の国へ出かけていくが、東へ向かうこともあり、西へ向こうこともある。また代表的な巨人の世界としてヨツンヘイムが挙げられるが、この国は北の方角にあるという。

…が、それも地図を描いてみれば分ることで、神々が人間を住まわせるべく作った世界、ミズガルズとは、↓のような感じで、巨人の住む国に囲まれているのだ。
 ミズガルズと巨人たちの国を隔てるものは、原初の巨人ユーミルを解体したときに取り出した、まつげによる防壁である。

 大地のまわりは、ぐるりと海が取り囲み、ここから外は「外世界」、つまり巨人たちの住む空間となる。…この海には、世界をとりまく蛇ヨルムンガンドが暮らしている。
 上の図では、大地はミズガルズのまわりだけだが、ことによっては、こんな感じ↓で巨人の国が分布していたかもしれない。


 この感じならば、特に不思議もなく理解できるかと思う。巨人の国は一つではなく、それぞれが陸続きとは限らない。簡単に言うと、たくさんあるのだ。
 「巨人族」とは、神々ではなく人間でもないもの、外の世界に住んでるよそ者すべてひっくるめた呼称だと考えられる。。
 よって、その中に、神々のように美しい者がいれば醜い者もいた、というのは当然のことといえるだろう。巨人と名前がついていても、小人のように小さな者だっていたかもしれない。

 ウトガルザ=ロキのように、「巨人の王」と呼ばれている場合も、巨人族すべてを統べるものと考えるよりは、巨人族の中の一部族を治めている、くらいに考えるほうが妥当だ。(何しろ巨人族の国は広い。)
 巨人の王として登場する存在は他にも、スリュムがいるし、多くの場合、スルトなども王らしきものに数えられる。ある意味ではヘルもそうだろう。
 各々の国がどの辺りにあったかは、今となっては分からないが…、あるいは、現実に存在した、何がしかの部族が神話化されたものかもしれない。

 と、いうわけで、巨人族の外見は、「美し」くもあるし「醜く」もある。さらに大きさもまちまちで、大きかったり小さかったり、あるいは人間と変わらなかったりする。
 これを覚えておけば、神話のエピソードごとに異なる外見で登場する巨人族に、戸惑わずにすむのではないだろうか。


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