アイスランド・サガ −ICELANDIC SAGA

サイトTOP2号館TOPコンテンツTOP

−6−


 ここで新たな家族が登場する。
 スタルカズとその一族、サンドギルのエギルとその一族だ。
 双方の息子たちは仲良しで、いつもつるんでいた。

 スタルカズは立派な赤毛の馬を持っていた。あるときスタルカズのもとを訪れたエギルの息子たちは、グンナルを、闘馬という競技に呼ぶことを提案する。グンナルも立派な馬を持っていたからだ。

 グンナルはニャールのところへ行き、この勝負を受けていいものか、と訪ねる。ニャールは、「あなたが勝つでしょうが、そのために争いが起こり、多くの者が死ぬでしょう」と、予見する。(ちなみに物語中、ニャールの予見することは、すべて実現する)

 この頃、グンナルの妻ハルゲルズの父、ホスクルドが死んだ。
 それから数日たたないうちに、スラーインと結婚していたハルゲルズの娘ソルゲルズは、男の子を出産する。男の子にはホスクルドという名前がつけられた。
 グンナルのもとには、すでにホグニとグラニという二人の息子がいる。これが、その当時の一族の状況だ。
 (自分ツッコミ…本当なんだかどうなんだか、ハルゲルズが「わたしの家系は竜殺しのシグルズから由来しているのよ」と語るシーンがあるが、それにしたって、シグルズの馬の名前を息子につけるこたぁ無いだろう。


 さてグンナルは、親友であるニャールの息子スカルプヘジンとともに闘馬に出た。スカルプヘジンの馬と激しくぶつかりあっていたとき、スタルカズの息子ソルゲイルと、エギルの息子コルがよからぬ企みをして、グンナルの馬を二人がかりで転がそうとする。激しく、危険な競技である闘馬にかこつけて、グンナルに恥をかかせようとしたのだ。
 しかし彼らは逆にグンナルに激しくぶつかられ、馬ごと転がってしまう。そのため辺りはひどいもみ合いとなった。ソルゲイルとコルは気絶し、グンナルは馬を失う。
 この騒動で、ニャールは、和解か、争いの停止を求めるが、ソルゲイルはどちらも受け入れず、グンナルの死体が見たいなどと言い出す。この争いは簡単に終わりそうもない。グンナルは報復を考え、義兄弟である「孔雀の」オーラーヴから助言を受け、身辺に気をつけることにした。


*************

 アースグリームが、ウールヴ・ウガソンと訴訟で争っていた。
 この争いはグンナルには関係ないものだったが、友人として、彼はアースグリームのために一肌脱いで、ことを収めるのに一役果たす。お礼に、とアースグリームが彼を招待したとき、ニャールは、ソルゲイルが報復を狙っていることを知った。
 ニャヘルは、もし出かけるのなら自分の息子たちも同行させるから行って欲しい、と申し出るが、グンナルは、心配をかけたくないからとニャールの息子たちには知らせずに、弟二人、コルスケッグとビョルンだけを連れてアースグリームのもとに出かける。

 その頃、ソルゲイルの父・スタルカズは、ソルゲイルら息子3人のほかに「豚頭」のシグルズという男を入れて、全部で15人の手勢を集めていた。
 知らせを受けたエギルは、息子たちのほかに、娘の婿になっているノルウェー人も連れて、スタルカズたちに加わる。全部で30人ほどだ。
 下のほうに挙げた家系図を見てもらうと分かるが、スタルカズとエギルの家系は仲が良く、互いに援助しあっている。
 この二人に関係する一族が、グンナルに恨みを抱いていたのである。

 アースグリームの家から帰るグンナルは。途中でこの待ち伏せを夢に見る。サガでは、夢のお告げは守護精霊の見せるものとされ、内容は大抵が実現する。
 グンナルは、夢を解釈し、弟ビョルンの死を予感する。だがビョルンは、兄に逃げるよう勧められても、ここで自分だけ抜けるわけにはいかない、と、同行を強く望む。

 そして予知夢のとおり、戦いが始まった。
 戦いは激しさを極め、予見されたとおり、ビョルンは死ぬ。しかし、スタルカズとエギルの側も、14人の死者を出した。
 死者が出れば、訴訟になる。グンナルは、この殺害についてニャールの助言を求め、ニャールは、彼に対し、起こされるであろう訴訟に勝つ方法について多くの策をさずける。
 一方で、生き残った、スタルカズの息子・ソルゲイルはグンナルに対し訴訟を起こすため、エギルの弟オヌンドに助言を求める。

 裁判の結果を簡単にまとめると、こうなる…
 ・ソルゲイルの負傷は、ソルゲイルがニャールの身内ソルフィンナを孕ませたという訴えと賠償相殺。
  (未婚の娘を手篭めにすることは罪になる)
 ・スタルカズの負傷は、過去にニャールの持ち森で勝手に木を切ったという訴えと賠償相殺。
  (つまり、ニャールとスタルカズの一族の間には、もとから不和があった)
 ・死んだソルゲイルの兄弟たちは、グンナル襲撃の罪によって半額で賠償される。
  (待ち伏せで、大人数で少数を襲うのは卑怯なこと)
 ・エギル殺害の訴えは、チュルウィングという人物が持つエギルに対する訴訟と相殺。
 ・エギルの息子コルとノルウェー人の殺害は、グンナルの弟ビョルンの殺害と相殺。

 グンナルの払うべき賠償金については、その場で支払いが行われ、訴訟には和解が成立。
 しかし、ソルゲイルは納得してはいなかった…。


******

 最初の頃に登場した女性、ウンの息子、モルズは成長していて、ここで、ギツルの娘ソルカトラと結婚する。
 この、あらたな親戚関係が、のちにグンナルに禍いを起こすことになるのだった。

 


BACK< INDEX >NEXT