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名誉


アイスランド・サガの中では、「侮辱」に対する「報告」、「身内の殺害」に対する「復讐殺人」などが語られる比率が非常に高い。
そのため、当時の人々は名誉に執着していたかのように見えるか、実は古アイスランド語には「名誉」という単語が存在しない。
サガの人物たちは「名誉のために」戦うのではない。現代の概念で栄光、運命、幸運、義務などにあたるものが、ごちゃまぜになっているが、そのどれとも違う。

国家によって権利を保護されていないアイスランドでは、自分や自分の一族の権利は、自分たちで守るしかない。侮辱に対し報復をするのは自分たちが一方的に不利な状況に置かれないため。彼らを戦いの義務に駆り立てたものは自己防衛であり、復讐の義務は権利を主張する自力救済の道だったと言えよう。

参考:「サガのこころ 中世北欧の世界へ」平凡社


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