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タイトル 必中の槍はグングニル?
記事No 2001
投稿日 : 2005/01/06(Thu) 23:15
投稿者 水槌
あけましておめでとうございます。

正月早々日記ネタですが、百発百中槍、私の知る限りではグングニルで合ってますよ。
(自サイトのページで恐縮ですが、こんな時のために作ったようなものなので…)
http://gensounobuki.fc2web.com/tennzihinn/gungnir.html
あと、投げて戻ってくるのは私の知る限りミョッルニルの方なんですが(下記参照)、
グングニルにもそういう話があるんでしょうか?
出典を教えていただけると非常にありがたいです(上記ページに追記するので)。

「この槌は何に対しても好きなように強く打つことができる。槌は決してこわれることはない。そして投げたら必ず当たり、彼の手にもどってこないほど遠くへ飛んでいくことは決してない。」
(谷口幸男「スノリ『エッダ』「詩語法」訳注」広島大学文学部紀要第43巻特輯号 p.42)

ちなみに、グングニルでググってみるとヒット数約12,400件(去年の年末調べ)。
その上位100件中、1/4以上がBUMP OF CHICKEN関係。影響力デカイっす。

タイトル 訳の違いとか色々
記事No 2002
投稿日 : 2005/01/07(Fri) 01:40
投稿者 岡沢 秋
> あけましておめでとうございます。
どーもー。
今年も宜しくお願いしますー。

> 正月早々日記ネタですが、百発百中槍、私の知る限りではグングニルで合ってますよ。

出典は菅原教授の「北欧神話」ですよね。
その本は読んだことないので知りませんがー。わりとウロ。

本によってグングニルの記述が違うので、ちょっと調べてみました。そして、おそらく理由が分かりました…

グングニルについての記述があるのはスノリの「詩語法」ですが、問題の部分の記述について、正確な訳は、こうです。


************

さて、ロキと侏儒が宝物を差し出したとき、アースたちは裁きの席に着き、オージンとトールとフレイが下した決定は変えられないものとされた。このときロキは、オージンには槍グングニルを、トールにはシヴがつけるはずの髪を、フレイにはスキーズブラズニルを渡して宝物みんなの説明をした――槍は的に当たって決してそのまま止まっていない、また髪はシヴの頭にのせられたとたん肉付き生える、そしてスキーズブラズニルはどこへ向かおうとも帆があげられるや追い風を受けるが、もしそうしたければ布切れのように折りたたんで自分の隠しにしまっておくこともできる。

**************
ステブリン・カーメンスキイ「神話学入門」付録より

おなじ菅原教授の訳ですが、すこーし違ってます。
問題は、「槍は的に当たって決してそのまま止まっていない」の部分です。元写本が違うのか、訳しなおしたからかは分かりませんが。

これを見ると、必ず当たる、とは読める。しかし、必ず相手を倒すのかどうかは書かれていないんですよね。
「そのまま止まっていない」ということは、戻るのかもしれないし、的を貫くという意味かもしれない。私はてっきり「投げて戻ってくる」んだと思ってました。^^;

というわけで、解釈しだいでいろんなふうに取れるんで、本によって多少記述がバラけているのだと思います。トールの武器については、投げたら戻ってくる、サイズ変更できる、という記述は変わりません。

あと今回気がついたんですが、シヴの髪って、ヅラじゃなくてア○ランス増毛法だったんですね。「もう悩み無用〜♪ あなたの髪きっと生えてくるぅぅ〜♪」っていう…。^^;
(リ―○21かマー○だったかも。これもウロ)

> ちなみに、グングニルでググってみるとヒット数約12,400件(去年の年末調べ)。
> その上位100件中、1/4以上がBUMP OF CHICKEN関係。影響力デカイっす。

ヴァイキング、地図持たないしー…グングニルは異教シンボルだから騎士は持てないしー…んー。曲的に嫌いではないんですが、なんかちょっとタイトルに偽りありな気が^^;

「♪死に際の騎士 その手にぐんぐにーる♪」の部分は、やっぱ多少の違和感ですね。(笑)  死んだらヴァルハラ往っちゃうのかよオイオイ!

タイトル 騎士の手に…
記事No 2007
投稿日 : 2005/01/10(Mon) 00:30
投稿者 水槌
> これを見ると、必ず当たる、とは読める。しかし、必ず相手を倒すのかどうかは書かれていないんですよね。
> 「そのまま止まっていない」ということは、戻るのかもしれないし、的を貫くという意味かもしれない。私はてっきり「投げて戻ってくる」んだと思ってました。^^;
>
> というわけで、解釈しだいでいろんなふうに取れるんで、本によって多少記述がバラけているのだと思います。

なるほど。ありがとうございます。
同じ箇所が谷口訳では「その槍は正しい場所にとまったままでいないし」になってますしね。
今度暇が出来たら(多分二月以降…)もう少し探ってみます。

> ヴァイキング、地図持たないしー…グングニルは異教シンボルだから騎士は持てないしー…んー。曲的に嫌いではないんですが、なんかちょっとタイトルに偽りありな気が^^;

騎士の手にグングニルってのは、某FFあたりのイメージなんじゃないですかね?
馬に跨り鎧兜に身を包んだオーディン、見た目はまるっきり騎士ですし、台詞もそれっぽかったような…。

ちなみに、個人的にはゲイ・ボルグの方がどういう槍なのかよく分からないです。
アーサー王伝説の方は、井村先生によるマロリーの完訳がようやっと出るようですが(1巻のみ既刊?)、
アルスター伝説も、『赤牛の書』か『レンスターの書』あたり、
完訳を出版してくれる奇特な研究者・出版社はいないものですかね?(他力本願)
そうすれば、もう少しすっきりするように思うんですが…。

タイトル グングニル探してみますか。
記事No 2009
投稿日 : 2005/01/10(Mon) 00:50
投稿者 岡沢 秋
確かどっかのサガに、戦いの時オーディンにグングニル借りたというエピソードがあつたハズなんですが、それによればグングニルは戦いの始まりを告げる合図の武器(敵軍の上をびゅーんと飛び越していく)であって、敵を打ち倒すものじゃないということだったんですよね。

どのサガだったか忘れたので探すのが大変…。

あとゲイ・ボルグは、ウロ覚えによればクフーリンが師匠のスカアハに貰ってきたもので、当たれと念じるとそいつに当たり、投げると先が分裂するらしい。

それを敵の手に渡しちゃったためにクフーリンは自分の武器で死ぬのですわ。だから「狙ったものは必ず貫く」「死に際の騎士 その手にグングニル」がピッタリ。


> 騎士の手にグングニルってのは、某FFあたりのイメージなんじゃないですかね?
> 馬に跨り鎧兜に身を包んだオーディン、見た目はまるっきり騎士ですし、台詞もそれっぽかったような…。

いやー、FFのオーディンは斬鉄剣ですから。

つかオーディン様、実は自分では戦わないのがポイントですから。人に戦わせる。で、戦死者は自分のふところにイタダキ。
オーディン様が戦ってるのは、(名前・姿を変えて人間界を旅してるときも含め)ほとんど見たことがないんですよね。


> アルスター伝説も、『赤牛の書』か『レンスターの書』あたり、
> 完訳を出版してくれる奇特な研究者・出版社はいないものですかね?(他力本願)

あーーーーー…うーん…
…読んでもたぶんスッキリしないと思います。実はアイルランド・ケルトの神話って、最近になって作られたもの…で…。

つまり古い伝説は断片的にしか残ってなくて、間をつないで、分かりやすくしたものが出回ってるだけ…だし…。
ど、どうなんだろう。

タイトル ゲイ・ボルグは槍にあらず?
記事No 2011
投稿日 : 2005/01/10(Mon) 22:14
投稿者 水槌
> あとゲイ・ボルグは、ウロ覚えによればクフーリンが師匠のスカアハに貰ってきたもので、当たれと念じるとそいつに当たり、投げると先が分裂するらしい。
>
> それを敵の手に渡しちゃったためにクフーリンは自分の武器で死ぬのですわ。だから「狙ったものは必ず貫く」「死に際の騎士 その手にグングニル」がピッタリ。

クフーリンが死ぬ時、相手に渡す槍ってゲイ・ボルグだったんですか? 井村さんの『ケルト神話』(ちくま文庫)には、そう書かれてはいなかったと思うのですが。それに、あれってスカアハに習わらないと使いこなせなかったのでは? まあ、この辺は本によって記述にブレがあって、あれは槍をもらったのではなく「ゲイ・ボルグ」という槍投げの技を教わったのだ、という話まであったりするんですよ。というわけで、「よく分からない」というのが正直なところなわけです。

> …読んでもたぶんスッキリしないと思います。実はアイルランド・ケルトの神話って、最近になって作られたもの…で…。
>
> つまり古い伝説は断片的にしか残ってなくて、間をつないで、分かりやすくしたものが出回ってるだけ…だし…。
> ど、どうなんだろう。

どこが古い断片なのか分かれば、少なくとも上記のような現状よりはマシになるんではないかと思うんですよね。神話扱ってて完全にスッキリするようなことは、まずありえないのは分かっているのですが(というより、どちらかというとスッキリしないところに魅力があるわけですから…)、分かるところまでは分かりたい、といったところです。


> いやー、FFのオーディンは斬鉄剣ですから。
いやいや、5や7のオーディンはちゃんとグングニルも投げますから。個人的にはそっちの印象が結構強かったり。

タイトル Re: グングニル探してみますか。
記事No 2017
投稿日 : 2005/01/13(Thu) 20:18
投稿者 toroia
>
> あーーーーー…うーん…
> …読んでもたぶんスッキリしないと思います。実はアイルランド・ケルトの神話って、最近になって作られたもの…で…。
>
> つまり古い伝説は断片的にしか残ってなくて、間をつないで、分かりやすくしたものが出回ってるだけ…だし…。
> ど、どうなんだろう。

偽書だったんですか!?
ガーン、です。原書も訳書も見たことないですけど……。

タイトル 偽書といいますか…
記事No 2019
投稿日 : 2005/01/14(Fri) 00:48
投稿者 岡沢 秋
「青春の国のアシーンの物語詩」というのは、18世紀にマイケル・コミンという方が書いたもののようなんです。(それまでに伝わっていた「口伝による」伝説を下敷きにして。)

オシーン(=スコットランドケルトでいうとこのオシァン)が、聖パトリックに過去の物語をする、という話ですね。

ティル・ナ・ノーグのニーアヴ姫に迎えられ、常世の国で結婚するけれど、仲間が懐かしくなって戻ってきてしまう。
すると何百年もたってて仲間はみんな死んでしまっている。
悲しみでニーアヴの注意を忘れてしまい、地面に足をつけたとたん年寄りになり、常世の国に戻れなくなってしまった…。

これ、アイルランドケルトでは有名なエピソードですが、成立自体は「オシァン」と変わらない時代のもので、成立の背景も同じだったんです。
しかしこちらは「偽書だ」と蹴られることもなく、むしろ古い時代の神話そのもののように思われて広まっているという。

なーんか釈然としないものを感じるのも分かっていただけますよね…。


「進入の書」、「アイルランド侵略の書」と呼ばれているものは12世紀に書かれた「歴史偽書」なのだそうです。

ノアの洪水によって生き残ったフィンタンがアイルランドに流れ着いたところから、最後に女神ダヌの一族がたどり着いて住み着き、それが妖精につながっていくという、有名な話ののってる本ですね。

偽書といいますか、私は歴史をファンタジー仕立てにしたものだと思いますが。(それを偽書と言ってしまったら、歴史とは何だという議論になってしまう)

そんなわけで、アイルランドのものは、いつ書かれたものでも「神話」扱いなのに、スコットランドのものは、最近書かれたから「神話じゃない」扱いなのに混乱中だったりします。

いぢわるな疑い方をしてしまうと、「…オシァン協会の陰謀?」<オイ!


で、ゲイ・ボルグ。
よくよく読むと、槍はあげてなかったです。「くれ」と敵に言われて、あげるのを断ったために呪いで死んでますね、彼。

ケルト世界のゲッシュ(誓約)って、自分で自分に呪いをかけてるようにしか見えないなぁ。

タイトル 偽書と偽史
記事No 2021
投稿日 : 2005/01/15(Sat) 20:29
投稿者 toroia
>「進入の書」、「アイルランド侵略の書」と呼ばれているものは12世紀に書かれた「歴史偽書」なのだそうです。

 ああなるほど、そういう言葉の使いかたもあるんですか。
 偽書と言われると胡散臭いとか証拠能力に欠けるとか捏造だとか無価値だとかマイナスイメージばかりが先行してしまうのですけど、普通、偽書というのは「出自(主に著者)を偽った書」という意味で、たとえば『ヨハネの黙示録』のような正典とか、『エノク書』とか(どっちも聖書の登場人物が書いたわけではない)、仏典の多くとか(普通は偽書とは言わないけど)、『竹内文書』とか『シオンの議定書』とかも偽書に入ります。
『オシァン』はその出自が「ベーオウルフよりも古い、ゲール語古写本の翻訳」というように少しばかり誇張されてるので(実際は(失われた?)古写本だけではなく同時代の民間伝承や後の時代の写本もソースだったでしょう)、その意味では偽書です。偽書というとき、内容の真偽や、騙すためのものか真摯に書かれたものかは、あんまり問題になりません(参考:http://www.ceres.dti.ne.jp/~alex-x/shosai/gisi-menu.html)。

 「侵略の書」は、どちらかというと偽史です。もし「これはノアが書いた」とか「これは紀元前の写本だ」とかあるなら偽書認定されるのでしょうが、実際は写本を書いてるお坊さんも「これは本当のこともあれば嘘もあり、勘違いもあれば、悪魔による誘導もあるんだろう」と最後に書き残しているらしいですし、偽書とは言いにくいかもです。ちなみに私としては、これらの「書」は「歴史をファンタジー仕立てにした」のではなく、「神話を歴史仕立てにしたもの+ほんとの歴史」という説のほうが好きだったり。

>「神話」扱い
そういえば初めて『ケルト事典』読んだとき、ルグもヌアドゥもダグダも神さま扱いされてないことに驚いた記憶があります。学問的な立場からすれば、中世の古い写本にあるものでさえ、一応アイルランド神話をモデルにしてはいても、厳密には神話ではなく、神々の物語ではない、と考えられてるようです。

 それが神話として広まるか単なる文学として広まるかは、権力関係のややこしい問題があるのかもしれないですね。でも、そもそも、単にケルト専門家の絶対数が少ないだけだったりして(日本では、数十年前まで、ギリシア神話だとして紹介されてきたものの多くがギリシア語ではなくラテン語で書かれローマ化された神話だった、という状況があったように)。

タイトル ほうほう、なるほど
記事No 2022
投稿日 : 2005/01/15(Sat) 22:59
投稿者 岡沢 秋
よい参考ページをありがとうございます。
偽書という言葉の使いかたってのは、今回はじめてブチあたった疑問でした。

「歴史をファンタジー仕立てに」というのは、まぁ、アバウトな言い方ですんでお気になさらずに。「そもそも客観的に歴史を書き残そうとしていないもの」といいますか…
昔の歴史書っていうのは、どうしても「ほんとの歴史」に、カン違いや故意にゆがめられた部分、不明瞭なソースなどを含むものかと思います。
ヘロドトスの歴史しかり、ジェフリー・オブ・モンマスの列王史しかり。

> 『オシァン』はその出自が「ベーオウルフよりも古い、ゲール語古写本の翻訳」というように少しばかり誇張されてるので(実際は(失われた?)古写本だけではなく同時代の民間伝承や後の時代の写本もソースだったでしょう)、その意味では偽書です。偽書というとき、内容の真偽や、騙すためのものか真摯に書かれたものかは、あんまり問題になりません

ベーオウルフよりも古いって言ってましたっけ?
それは難しいような…<オマエが言うか

ベオの成立は8世紀初頭から9世紀初頭の100年間、たぶん9世紀に入ってから書かれたんじゃない? と言われてる作品。それより前っていったらハイランドにキリスト教が伝わったギリギリくらいになりますよね確か。

せいぜい12世紀以降とか…そのくらいじゃないと…。

しかし「何の根拠もない」と非難されているところを見ると、
ただ年代にサバを読んだだけではない気が。

>『竹内文書』とか『シオンの議定書』とかも偽書に入ります。

竹内文書は偽書ととらえるよりは、ファンタジー世界の設定集だと思ったほうが面白そうですね(笑)。
荒俣氏あたりが小説の設定集として出したらベストセラーになったりして。みんなで竹内文書をベースにした小説を書いてクトゥルー神話ならぬ竹内神話を作れば、ホラ! 楽しい世界!

…冗談っす。スミマセン

タイトル 余談
記事No 2023
投稿日 : 2005/01/15(Sat) 23:26
投稿者 摩伊都
現在、独逸語の文書の訳に手間を取られて、ここのレスに参加したくてもなかなか出来ない、辛い所ですが・・・

> みんなで竹内文書をベースにした小説を書いてクトゥルー神話ならぬ竹内神話を作れば、
クトゥルー神話、これってどうして「神話」と言われるのか、ずっと不思議に思ってきました。ラヴクラフトの卓越した文章と想像された世界のすごさの所以でしょうか。すみませんね。余談でした。

toroiaさんが言及していますが・・・
私の日記にリンクさせている Das Lied vom H&uuml;rnen Seyfrid のサイトをもう少し丁寧に読んでいるところです。あのイラストが、昔のものなのか、昔の資料をもとにして、あのサイトの管理人が描いたものなのか、(つまり新しいものなのか)ちょっと分かりかねる部分があるものですから。
16世紀の Das Lied vom H&uuml;rnen Seyfrid の韻文を元に、いろんな解釈やイラスト入りのストーリーを交え、一冊の本にした・・・その本の宣伝のためもあって、あのサイトを運営しているようなので。

もしイラストが昔のもの(または、正確な復刻版)であっても、イラストの下に書いてある文章が、韻文そのままのものなのか、サイト運営者が多少創造して物語を作っているのか・・・も、現在、オリジナルテキストと比較している所です。
Das Lied vom H&uuml;rnen Seyfrid の179節の韻文が、28枚のイラストとその説明で集約してあるのですが、内容を網羅するのは少し難しいと思うのです。
私にはアイルランドや英国の伝説に関する知識があまりないので、ゲルマンにこだわって、遠回りしながら Drache と Wurm の違いを調べて見ます。(でも、時間がいくらあっても足りない。。。 )

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