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タイトル ミイラの心臓についてなのですが・・
記事No 2090
投稿日 : 2005/04/19(Tue) 03:05
投稿者 バジル
はじめまして。岡沢さんの情熱とパワーに感激しながらいつも楽しく拝見させていただいてます。
「古代エジプトの魔術」E・A・ウォーリス・バッジ著を読んでいるのですが、そのなかの「心臓の護符」の項に出てきた記述について質問させて頂きたく、以下に内容を簡単に引用してみました。
「心臓は他のものと別にしてミイラにされ、肺と共に壺に入れられ保存された。ミイラにする過程で取り出された心臓の代わりを死者に与えるため、死者の書の中に呪文の一文が取り入れられた。」
もしかしたら心臓のないミイラや心臓の入ったカノプス壺が発見されているのでしょうか?
前にも何かで心臓のカノプス壺の記述を見た気がします。
もしご存知でしたら教えていただきたいのですが・・よろしくお願いします。

タイトル Re: ミイラの心臓についてなのですが・・
記事No 2091
投稿日 : 2005/04/19(Tue) 23:18
投稿者 岡沢 秋
はじめまして。
「古代エジプトの魔術」は、本屋で見かけたことがあるけど、中を見てなかったりします。なんか魔術っぽい本ですよね、確か。

> 「心臓は他のものと別にしてミイラにされ、肺と共に壺に入れられ保存された。ミイラにする過程で取り出された心臓の代わりを死者に与えるため、死者の書の中に呪文の一文が取り入れられた。」
> もしかしたら心臓のないミイラや心臓の入ったカノプス壺が発見されているのでしょうか?

えと、まずカノポス壷には入っていないです。
カノポス壷4種類には、それぞれ入れる臓器が決まっています。

↓こうなってます
http://www.moonover.jp/bekkan/sisya/sisya-canope.htm

どこかで見たというのは、守護要素の心臓のことですかね?
実際に中に入れてるわけではないです。

---
で、ミイラは腐りやすい内蔵抜いて作られるのですが、
普通、心臓だけは抜かないとされています。

時代や、そのミイラのグレード(どれだけ手をかけて防腐処理をするか)によっても、処理の仕方は異なりますが、
心臓は死者が死後の世界に入るために必要不可欠な臓器ですので、
体の中にそのまま残します。

古代エジプト人にとって、魂と、その人の生きていた中で培った罪もしくは功徳は、すべて心臓に宿るものでした…

有名な、心臓と真実の羽根を秤にかける「死者の審判」も、心臓が無ければ受けることすら出来ませんよね。

なので、心臓を損なうことはNGだったんですよ。
心臓の護符っていうのは、もしかして、裏に死者の書を刻んだハート・スカラベのことでしょうか?

ハート・スカラベは通常、死者の書の第30章(b)を刻むんですが、その内容は心臓の代わりを与えるというよりは、死者の審判の時、自分の心臓が、自分の不利になる証言をしないように祈る内容と言ったほうが近いかと思います。

---
えーと、ミイラの作り方について、いま手元にあるのが第21王朝のミイラの作り方なんで、もしかしたら違う時代があったかも… 違ってたら誰かフォローよろすくです。

脳は抜くけど心臓は抜かない、これがデフォルトですよね?

タイトル Re^2: ミイラの心臓についてなのですが・・
記事No 2092
投稿日 : 2005/04/20(Wed) 13:06
投稿者 バジル
丁寧な回答をありがとうございます。感激です。

> 有名な、心臓と真実の羽根を秤にかける「死者の審判」も、心臓が無ければ受けることすら出来ませんよね。

サー・バッジの書くところによるとミイラにする過程で取り出された心臓の代わりを死者に与えるため「死者の書」の中の呪文

[心臓の館にてわが心臓われと共にあれかし 〜略〜
アンプウをしてわれに立つあたわしめ、セケトをして天国の門にのぼり、プターのカーの家にてわが命ずることの成就するを得さしめ給え 〜略〜
カーの欲するままに何事をもなす力を得べし。
冥府の門にてわが魂はわが身体にしばるることなく、われは無事に入りて進むべし。]

「死者が唱えると、
死者が自分の心臓を支配する力を得て、心臓と第二霊と魂は、行きたいところに行き、やりたいことのできる力をもった」
とあったので
もしかしたら「死者の審判」をスルーできる魔法があったか、古い時代もしくは地方の儀式なのかな〜
などと思って嬉しくなっていたのですが・・・

この本の訳者あとがきによると、サー・バッジは19世紀の研究者なので、今日の研究者からはいろいろな過誤も指摘されているようです。
もしかしたらこれもその誤りのひとつかも・・・?

> 脳は抜くけど心臓は抜かない、これがデフォルトですよね?

昔のひとってたいてい脳はないがしろですよね・・脳みそのことなんだと思ってたのか気になります〜〜

はっ少し話題がそれてしまいましたが・・ではでは〜

タイトル Re^3: ミイラの心臓についてなのですが・・
記事No 2093
投稿日 : 2005/04/21(Thu) 01:05
投稿者 岡沢 秋
> 丁寧な回答をありがとうございます。感激です。

いえ…けっこう適当だったり(汗

> 「死者の書」の中の呪文

え…うーん、??
その呪文、第何章とか書いてあります?

死者の書の内容全部覚えるとか流石に無理なんで、ぱっと見、どことのことを指してるのか分からないですが…30章じゃないですね。

死者の書って、ばらばらに見えて実はストーリーがあるんですよ。
死者が前準備をして使者の国に入り、旅をしてオシリスの法廷に入り、審判を受け、その後、死者の楽園にて暮らす…というふうな。

バジルさんの書いてくださった呪文は、「冥府の門にてわが魂はわが身体にしばるることなく、われは無事に入りて進むべし。」と言ってるので、おそらく心臓の審判より前、死者の国に入る段階のだと思うんです。

> もしかしたら「死者の審判」をスルーできる魔法があったか、古い時代もしくは地方の儀式なのかな〜
> などと思って嬉しくなっていたのですが・・・

いや、スルーできません。
むしろ、その審判があるからこそ庶民も死者の国に入れるわけで。

庶民は永遠を得ることが出来ず、死後に復活できるのは王のみという教義であった初期のエジプト宗教では、王は現人神なので審判なんてスルー、必ず神々に認められて復活する、というニュアンスだったようですよ。

…ただ、まぁ、死者の書の30章っていうのは、自分の心臓に向かって「神々に不利な証言しないでね」「私から離れていかないでね」とお願いする内容なので、説得に成功すると、審判をごまかせることにもなるのかも…しれません。

"我が心、すなわち我が母、(中略)願わくば何ものも審判の際、起ちて、我に反対することなからん"

…みたいな感じの内容です。
>
> この本の訳者あとがきによると、サー・バッジは19世紀の研究者なので、今日の研究者からはいろいろな過誤も指摘されているようです。
> もしかしたらこれもその誤りのひとつかも・・・?

うーん、かも…ですね。
内容は見ていないのですが、オカルト的な視点で見ようとして、ちょっと曲解している部分もあるのかも。

> 昔のひとってたいてい脳はないがしろですよね・・脳みそのことなんだと思ってたのか気になります〜〜

…腐りやすい内臓…とか…^^;
砂漠で死んだ人の死体は、数日発見が遅れると脳みそが全部腐ってメルティになっていたそうですよ。(お食事前・中の方すんません)

何かのお役にたてれば幸いです。
ではでは。

タイトル Re^4: ミイラの心臓についてなのですが・・
記事No 2095
投稿日 : 2005/04/22(Fri) 19:35
投稿者 toroia
余談ですが、このサイトに掲載されている日本語訳「死者の書」は、
ネット上に落ちているウォーリス・バッジによる英訳と見比べてみると、
・・・・かなりの割合でバッジからの重訳っぽいです。

タイトル そうですよん
記事No 2096
投稿日 : 2005/04/22(Fri) 20:58
投稿者 岡沢 秋
> ・・・・かなりの割合でバッジからの重訳っぽいです。

はい。そうです。
元本は1906年のバッジ初版。
そのあと、さらに精度の高い訳も出ているらしいのですが、フランス語とドイツ語な上、日本語への変換がされていないようなのです。

正確な訳ではないことは、コンテンツに注意書きしたとおりです。

ただ、訳文的には古いものをしてますが、解釈は今の時代の資料からもってきているんですね。

タイトル そうでしたか
記事No 2097
投稿日 : 2005/04/24(Sun) 08:41
投稿者 toroia
> そのあと、さらに精度の高い訳も出ているらしいのですが、フランス語とドイツ語な上、日本語への変換がされていないようなのです。
>

一応英語のも出ているようですが、やっぱ日本語がほしいですね。
(とくに私のようにエジプト語の素養がない人にとっては!)

誰か訳してくれ!!!(できれば対訳で)

タイトル もしかして。
記事No 2098
投稿日 : 2005/04/29(Fri) 12:10
投稿者 岡沢 秋
ウォーリス・バッジの言いたいのは、ミイラにする過程で心臓を取り出したんではなく、心臓を秤に乗せて罪をはかる「審判」の時に取り出した心臓の代わりをする、ということでは?

もしくはバッジが勘違いをしていたか。
スカラベの裏に欠いてる死者の書は、審判の際、心臓が罪の重さで秤を傾かせないよう祈る呪文のカンペですし、それだとしっくりくるんですが。


あと、すごく古い訳しかないので不明確ですが、バジルさんの写された死者の書は、2章か3章な気がします…

タイトル 四種類の心臓の護符(?)
記事No 2105
投稿日 : 2005/05/03(Tue) 09:02
投稿者 バジル
「古代エジプトの魔術」の中では四種類の心臓の護符とそれぞれの呪文が書かれています。簡単にぬきだしてみました。

1・瑠璃石 (26章)
ミイラにする過程で取り出された心臓のかわり。
死者が呪文を唱えると、心臓と第二霊と魂は、行きたいところに行き,やりたいことができる。

2・白い半透明の石 (27章)
半人半獣(?)の怪物に心臓を奪いさられるのを防ぐ。

3・紅玉髄(紅玉=ルビー?・・・髄って・・?)(29章B)
オシリスとラーの加護をもたらす。

4・緑石の神聖甲虫
呪文「〜〜略〜〜君なる王者の前にてわれに不利の言のあらざるよう、秤の番をなし給う御方の前にて、何時、われより離るることなきようなし給え〜〜略〜〜」

> ウォーリス・バッジの言いたいのは、ミイラにする過程で心臓を取り出したんではなく、心臓を秤に乗せて罪をはかる「審判」の時に取り出した心臓の代わりをする、ということでは?

 バッジ氏によると、少なくとも、瑠璃石の心臓の護符ではミイラにする過程で心臓を抜き出してしまっているようです。

> もしくはバッジが勘違いをしていたか。

バッジ氏がこの本を書いたのは100年くらい前ですし・・・やはり勘違いですか・・・

> スカラベの裏に欠いてる死者の書は、審判の際、心臓が罪の重さで秤を傾かせないよう祈る呪文のカンペですし、それだとしっくりくるんですが。

これが「神聖昆虫の心臓の護符」にあたるのでしょうか?


> あと、すごく古い訳しかないので不明確ですが、バジルさんの写された死者の書は、2章か3章な気がします…

この本の訳者あとがきによりますと
バッジ氏による1898年発行「死者の書」3巻の初版本では解説はほとんど省略され、2年後発行の本書「古代エジプトの魔術」にそれをゆずったのでは・・とあります。
その本の出版のしかた自体も不思議でありますが・・・
19世紀末、英国のオカルトブームなんかとも関係してるのかな〜などと穿ちってみたり・・・

わたしは知識がないもので本に書いてあることは、「学者様の言う事だから間違いねえべ」と、鵜呑みにしがちなので、岡沢さんのように自分で検証なさる方に意見をいただけるととても嬉しいです。

タイトル ミイラの上にならべる護符シリーズ
記事No 2106
投稿日 : 2005/05/03(Tue) 22:09
投稿者 岡沢 秋
> 「古代エジプトの魔術」の中では四種類の心臓の護符とそれぞれの呪文が書かれています。

うーんと、四種類に限らないんですが、ミイラの上には、さまざまな護符を並べられていたんです。ちょうど、こないだ行ってきた古代オリエント博物館のエジプト展でも、それについての展示がありました。

白い半透明の石っていうのは、たぶん凍石のことではないかと。
透明な白っぽい石のことを、そう呼ぶみたいです…

紅玉髄というのは、カーネリアンです。↓
http://tellus.hp.infoseek.co.jp/stone26.htm
古代エジプトでは、「イスシの血」と呼ばれていた石ですね〜。


> 1・瑠璃石 (26章)
> ミイラにする過程で取り出された心臓のかわり。
> 死者が呪文を唱えると、心臓と第二霊と魂は、行きたいところに行き,やりたいことができる。

死者が心臓を胸の前に持って立っている場面です。
その前の25章が、死者が死んだのちも生前の名前を忘れずに持っていけるように、との呪文なので、この章は、死者が死んだのちも自分の心臓を失わずに下界に下りられるようにするための、下準備の呪文だと思います。ミイラにする過程で取り去られた、という部分が、たぶん勘違いなのだと。第二霊と魂、というのは、バーとカーのことのようです。バーとカーに自由を与えよ、といった内容が書かれてます。


> 2・白い半透明の石 (27章)
> 半人半獣(?)の怪物に心臓を奪いさられるのを防ぐ。

半人半獣というのでアメミットのことかと思ったら、ホルスの息子たちと呼ばれてる四柱の神々のことでした。
呪文の中身は「汝ら、心臓をとりさるなかれ」と言ってますが、簡単に要約すると「私はこれから、私の心臓をもって下界に行きますが、攻撃しないでください、守ってください」というような感じの内容でし。

> 3・紅玉髄(紅玉=ルビー?・・・髄って・・?)(29章B)
> オシリスとラーの加護をもたらす。

定型の文句で、「我はベンヌ鳥なり、ラーなり…我はオシリスなり」となってるので、ラーのように永遠を得、オシリスように復活できますように、ということを言ってる呪文ですたい。

> 4・緑石の神聖甲虫
> 呪文「〜〜略〜〜君なる王者の前にてわれに不利の言のあらざるよう、秤の番をなし給う御方の前にて、何時、われより離るることなきようなし給え〜〜略〜〜」

これが前のレスで書いたやつですね。死者の書の30章です。

手元にあるのがバッジの訳を定本にして、ちょい後に書かれた日本語訳版なので、内容的にはほぼ同じ。
バジルさんに書いていただいた内容で、ちょっと話が見えてきました。
バッジの時代って、比喩表現とか、宗教的な背景がまだよく分かっていなくて、文章をぜんぶ文字通り理解してたのかも…。

タイトル Re: ミイラの上にならべる護符シリーズ
記事No 2107
投稿日 : 2005/05/04(Wed) 13:54
投稿者 バジル

> うーんと、四種類に限らないんですが、ミイラの上には、さまざまな護符を並べられていたんです。ちょうど、こないだ行ってきた古代オリエント博物館のエジプト展でも、それについての展示がありました。
>
> 白い半透明の石っていうのは、たぶん凍石のことではないかと。
> 透明な白っぽい石のことを、そう呼ぶみたいです…
>
> 紅玉髄というのは、カーネリアンです。↓
>http://tellus.hp.infoseek.co.jp/stone26.htm
> 古代エジプトでは、「イスシの血」と呼ばれていた石ですね〜。

そんな石があったんですね。わたしも実物見てみたいです。

> > 1・瑠璃石 (26章)
> > ミイラにする過程で取り出された心臓のかわり。
> > 死者が呪文を唱えると、心臓と第二霊と魂は、行きたいところに行き,やりたいことができる。
>
> 死者が心臓を胸の前に持って立っている場面です。
> その前の25章が、死者が死んだのちも生前の名前を忘れずに持っていけるように、との呪文なので、この章は、死者が死んだのちも自分の心臓を失わずに下界に下りられるようにするための、下準備の呪文だと思います。ミイラにする過程で取り去られた、という部分が、たぶん勘違いなのだと。第二霊と魂、というのは、バーとカーのことのようです。バーとカーに自由を与えよ、といった内容が書かれてます。

なるほど。。。そういうことなのですね。納得いきます〜
>
> > 2・白い半透明の石 (27章)
> > 半人半獣(?)の怪物に心臓を奪いさられるのを防ぐ。
>
> 半人半獣というのでアメミットのことかと思ったら、ホルスの息子たちと呼ばれてる四柱の神々のことでした。
> 呪文の中身は「汝ら、心臓をとりさるなかれ」と言ってますが、簡単に要約すると「私はこれから、私の心臓をもって下界に行きますが、攻撃しないでください、守ってください」というような感じの内容でし。

半身半獣の怪物とあったのでなにか妖怪的なものを撃退するのかと思ってしまっていました。

> > 3・紅玉髄(紅玉=ルビー?・・・髄って・・?)(29章B)
> > オシリスとラーの加護をもたらす。
>
> 定型の文句で、「我はベンヌ鳥なり、ラーなり…我はオシリスなり」となってるので、ラーのように永遠を得、オシリスように復活できますように、ということを言ってる呪文ですたい。

そうか・・永遠と復活・・「わたしは不死鳥」ってことですか。

> > 4・緑石の神聖甲虫
> > 呪文「〜〜略〜〜君なる王者の前にてわれに不利の言のあらざるよう、秤の番をなし給う御方の前にて、何時、われより離るることなきようなし給え〜〜略〜〜」
>
> これが前のレスで書いたやつですね。死者の書の30章です。

> > バッジの時代って、比喩表現とか、宗教的な背景がまだよく分かっていなくて、

古代エジプトの歴史と古代エジプト研究の歴史、エジプト三千年の上にさらに時代が積み重なった壮大さを感じます。

岡沢さんのおかげで頭の中でばらばらになっていたものが少し繋がりました。ありがとうございます。


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