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投稿時間:2002/06/28(Fri) 12:45
投稿者名:岡沢 秋
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タイトル:
ハゲネのジーフリト殺害 2
 以前あった、ハゲネのジーフリト殺害に関するスレについて。
 ニーベルンゲン関係のサイトを、うろうろ探していて、こんなものを見つけました。↓http://www.syugo.com/germinal/lecture/nibelungenlied/conclusion.html

 言われて見ると、確かに。
 ジーフリトさんは、クリエムヒルトを嫁にもらいにいくとは、グンテルを脅した挙げ句、くれないなら国もろとも奪ってやるとか言ってますね。
 恐喝か(笑)
 そりゃ・・・ すんなり妹を嫁にやるのは王としてのコケンに関わるし、人々の不況を買ってもしょうがないですね。(特にハゲネはこういうのが嫌いそう。)

 サガでも、ニーベルンゲンでも、結局は自分の撒いた種で殺されているのでは。
 ハゲネが特別どうこうだった、よりも、ジーフリトには、殺されるだけの理由はあったんでしょう。

投稿時間:2002/06/29(Sat) 16:55
投稿者名:きよ
Eメール:kyamazak@ix.netcom.com
URL :http://home.ix.netcom.com/~kyamazak/index.html
タイトル:
Re: ハゲネのジーフリト殺害 2
私もさっき、同じサイトに行ってました。実は、中世ドイツ語テキストのデータベース(MHDBDB) 使って、ニーベルンゲンの歌の全固有名詞のリストを作成してたんですが、その折、 www.syugo.com さんの全登場人物のリストを見つけました。「岩波版」も、ところどころ読むと、やっぱ。

 クリエムヒルトの美化・功罪隠蔽(whitewash)
          と
      ハーゲンの悪玉化(smear)

が目立ちます。まず、クリエムヒルトが遠国に聞こえた美女で、ジーフリトがそのことを聞き及んでブルゴントの国へやってきたとか、実際にこの目で見て一目惚れした、なんてのは『歌』の作者の(地元びいきの)創作です。
『ヴェルスンガ・サガ』だと、ジグルトは、財宝持ってふらりとやって来て、口に出すのは、ブリュンヒルトのノロケ話ばかりなので、それがおもしろくないブルゴントの母后が媚薬か忘却の薬をシグルドに盛って、恣意的に自分の娘とくっつけさせるのです。
 ですが、王后がこういう魔女まがいのことをしていたというのは、敬虔なるキリスト信者である地元の人にしては、はなはだ都合悪いから、その事実は抹消。
 美貌のほまれたかいブルゴントの王女と、その噂をきいてきてやってきたニーデルラントのプリンス、まるでその出会いからして、二人は赤い糸でつながっているような印象を受けます。ですが、ノルニール姉妹たちの紡ぐ運命の糸で、もともとつながっているのは、ジグルトとブリュンヒルトなのであり、ただ、「アンドヴァリの呪い」のために、二人は添い遂げることはできないのです。

 ライン地域の地元びいきは、こんなところにもさりげなく挿入されてます。箇所は593節。プリュンヒルドがウォルムズ入りするところで、ようするにプリュンヒルトも美しいという人は多いが、もっと眼の肥えた御仁たちは、クリムヒルトに軍配をあげましたとさ。と書かれてます。イースラント(アイスランド)くんだりからやって来た女に、「今までにない美女」の称号を簡単にかっさられたとなったら、ウォルムズっ子の名折れだからでしょう。
 
 ハゲネにしてみても、はなっから、悪評高いヤツに仕立てられています。52−3節で、ジフリートの父は「あのグンテル王には、数々の思い上がった家来が。。例えばあのハゲネ。。あれは思い上がって、無礼なこともしかねぬ男だ」とこういう言い草ですからね。
 北欧では、ジフリート殺しの張本人ではないのに、こちらでは巧言でクリエムヒルトをだまくらかして、ジフリートの唯一の急所を聞き出して、そんでもってその場所を示す十字架型の縫い取りまで作らせて、そこを背後からグサッ、ですからね。

 

投稿時間:2002/06/30(Sun) 08:49
投稿者名:岡沢 秋
Eメール:moon-over@mtf.biglobe.ne.jp
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タイトル:
Re^2: ハゲネのジーフリト殺害 2
 ハゲネが悪役に見えるのは、前半だけじゃないですか?
 後半は、丸腰の相手を背後から襲うとは思えないくらい、立派で堂々とした勇士になっている。
 扱いが違うというので、「前半と後半は違う作者のものだ。それをつなぎあわせたものが今のニーベルンゲンの歌だ」と、いう説もあったようです。

 彼はジーフリトの故郷では確かに悪評のようですが、脱走してきたはずのフン族のところでは、気が荒いと言われながら、むしろ褒められているように思います。
 クリエムヒルト妃に至っては、何故かハゲネより側にいるフォルケールに注意しろと部下に言っていますし。

 友好関係に無い国からすれば、相手方の強い戦士を悪く言うのは、当たり前かと思うのですが…。


 「ニーベルンゲンの歌」で地元びいきがある、とはよく言われますが、どうでしょう、同時代のヴォルフラムやハルトマンのものと比べると、作品中に独り言にも似た自分の私生活を入れてみたり、特定の支援者を褒めてみたりしないあたり、相当ひかえめだと思いませんか。

 住んでいる地域のことがいちばん詳しいのだから、そのあたりの描写が細かいのも仕方が無い。地元出身者にいい役が回ってくるのも、当然といえば当然のことで。
 アメリカの戦隊モノでは、レッドは必ず白人で、アジア系はお調子者の役しかもらえないっていうのと似ているかも。(?)


 思うんですが、「ニーベルンゲンの歌」の作者は、最初、「ヴォルスンガ・サガ」をキリスト教的に書きなおすために、ハゲネを悪役に、クリエムヒルトを悲劇のヒロインに仕立てようとしたけれど、失敗したんじゃないでしょうか。

 ジーフリトがまだ恋を知らぬ王子で、クリエムヒルトが純潔な王女、ふたりはであってすぐに恋に落ち…なんていうのは、騎士文学のお約束、理想的なカップルでしょう。
 でも普通、そういう騎士文学の姫様は、自ら旦那の復讐なんかしませんよね。

 「パルチヴァール」に登場するオルゲルーゼも愛人の復讐はしていますが、通りすがりの騎士を連れてきて一騎打ちさせるだけで、ここまでムチャクチャはしなかった。まして、自分の子供を犠牲にするなど、
まずやらんでしょう。それこそサガ特有の世界です。

 この、サガの粗筋を持ってきているあたり、すでに、前半で試みられたクリエムヒルトの美化・理想の姫君化は無くなっていると思うんですが…どうでしょう。
 もし彼女を美化して、ハゲネを悪にするのなら、作者は前半部分だけど話を終わらなくてはならなかったはず。

 (キリスト教徒が辛うじて受け入れられたのは前半だけのようで、異教的として弾圧されたこの物語が再発見後に発刊されたときも、前半部分のみだった。)

+++
 えー。めちゃめちゃ低俗なツッコミなんですけど、全身鎧化して刃物の通らない相手を正々堂々と殺すのって、どうすればいいんですかね。正面から行っても絶対殺せないじゃないスか。
 むしろジーフリトのが卑怯くさい。キリスト教の世界に、竜の血で無敵になった人間が出て来るか?!
 キリスト教徒様はそんな魔術の鎧なんか着てないっつの。
 勝てないじゃん。
 話の展開上、彼はどうしても殺されなくちゃならないわけだから、後ろから刺されるしかないでしょう…。むしろハゲネの選択は、正しいのではなかろうか。

 サガと違って「我々がシグルドを殺してくれたわ」と、堂々とクリエムヒルトに言わないのが卑怯くさいといわれるゆえんかと。
 でも、まあ、あのときはジーフリトのパパさんも来てたことだし…言えないか…?

投稿時間:2002/06/30(Sun) 17:37
投稿者名:きよ
Eメール:kyamazak@ix.netcom.com
URL :http://home.ix.netcom.com/~kyamazak/index.html
タイトル:
Re^3: ハゲネのジーフリト殺害 2
>ハゲネが悪役に見えるのは、前半だけじゃないですか?
>後半は、丸腰の相手を背後から襲うとは思えないくらい、立派で
>堂々とした勇士になっている。

『歌』後半のハゲネは、堂々としてますね。エッツェルから招聘されても、それが罠だと看破つつ同行に合意します。「一族滅亡」の予言を聞いても、ほかの戦士は青くなったりあたふたしたりしますけれど、ハゲネは帰りの渡し舟もこわして、きっぱりと覚悟をきめます。そうした「潔さ」がアピールになっているとおもいます。もちろん、最後に捕縛されて、死刑の俎上に載ったとこの姿も天晴れです。

 しかし、後半のハゲネも、けっこう「非道い奴」に仕立てられていると感じます。
 まず、予言の真否をたしかめるため、ろくすら泳げないブルゴントの出入りの司祭を、ドーナウ河に放り投げること。
 きわめつけは、年端も行かないオルトリエプ王子を、いきなり真っ先に血祭りにあげることです。
 『シドレクスサガ』この箇所では、ハゲネはいきなり斬り捨てたのではありません。クリエムヒルトが、オルトリエプ王子に「ハゲネの横っ面を殴っておいで」と言いつけて、挑発させています。顔面殴られてかっとなって斬ったのです。そして『シドレクスサガ』要約も指摘していますが、オルトリエプの傅育官にしても、「伯父を殴るなどという、無礼な躾をした傅育官に腹が立ったから」、手打ちにしたのです。

 また、クリエムヒルトの美化というか功罪の抹消は後半でも随所に見受けられます。たとえば、オルトリエプ王子のことにしても、『シドレクスサガ』によればクリエムヒルトは、ハゲネの気性を知っていて、むざむざ斬り捨てになるのを知りながら、我が子を犠牲にしたのです。(形こそ違え、『ヴェルスンガ・サガ』にもクリエムヒルト/グズルンが我が子を殺したのだという伝承はのこされてます。)この咎を『歌』は、きれいさっぱり隠しています。

 あと『歌』の、クリエムヒルトが、館に火を放たさせる箇所。サガ』では、クリエムヒルトがくすぶった燃えさしを、兄弟のゲールノートやギゼルヘールの口の中に突き刺してグリグリ押しつけます。すると、まだ十二歳くらいの弟の方はまだ息があって、そのときもだえ苦しみます。このふるまいは、ディートリヒにして、「だから申し上げたろう、グリムヒルトさまは、女などではない、悪魔だと」と言わしめます。

このクリエムヒルトさまにご都合の悪いシーンも『歌』はカ〜ット。どころか、悪魔チックなふるまいはハゲネに転嫁。(火をかけられたとき、ハゲネは、こんなとき死者の血を啜れば、それは美酒にもまさる美味であることまちがいなし、熱バテもケロリと直ろうぞ、とサジェスチョンする)。


>えー。めちゃめちゃ低俗なツッコミなんですけど、全身鎧化して刃物>の通らない相手を正々堂々と殺すのって、どうすればいいんですか
>ね。正面から行っても絶対殺せないじゃないスか。
ははは。これは、私もかねがね思ってました。「そんなんありかー」ってやつですね。
 これは、『イリアス』のモロ、パクリでやんすね。アキレウスが赤子のとき、三途の川の水に漬からせて無敵の体になったけど、そのとき赤子をつまんでいたかかとの部分には行きわたらなかったから、アキレウスのかかとが弱点になったという。
 

投稿時間:2002/06/30(Sun) 21:57
投稿者名:岡沢 秋
Eメール:moon-over@mtf.biglobe.ne.jp
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タイトル:
そういや
>オルトリエプ殺害シーン

 私も「アレ?」って、思ってたんですよ。「サガ」では殺される理由があるのに、「歌」ではそれが無い。
 ダンクワルトが「裏切られた」と告げに来たとたんキレて側にいるオルトリエプを殺してますよね。

 確か過去にツッコミコーナーにそんなことを書いたような気がします。シグルド殺害より、むしろオトリエプ殺害のほうで「この悪党!」
と、責めるほうが正しいような気もするのですが、息子が殺されたことを悲しみもしないクリエムヒルトもお相子ですね。

 司祭を川に投げこんだシーンといい、この人は短気なんですね。
 それは弁護できません(笑) めちゃめちゃ短気で怒りっぽい人ッス。勢いで人を殺すゲルマン人。


>  あと『歌』の、クリエムヒルトが、館に火を放たさせる箇所。サガ』では、クリエムヒルトがくすぶった燃えさしを、兄弟のゲールノートやギゼルヘールの口の中に突き刺してグリグリ押しつけます。すると、まだ十二歳くらいの弟の方はまだ息があって、そのときもだえ苦しみます。このふるまいは、ディートリヒにして、「だから申し上げたろう、グリムヒルトさまは、女などではない、悪魔だと」と言わしめます。

 おお。その部分は読んだことがありませんでした。ムチャクチャしてますね。
 て、いうかギーゼルヘル12歳?
 12歳で成人のはずじゃぁ…。初陣が姉との戦いですか? それも嫌だな。

 そうか、サガを知らない人は、クリエムヒルトが過去の作品で何をしてきたか、全然知らないんですね。
 私のクリエムヒルトのイメージは、最初っから「コワイ人」だったので、後半で変貌してもべつに違和感無かったのですが…。

 そうか、だから少女漫画のクリエムヒルトは、おめめキラキラの美少女なのか!(笑) ハゲネがオカッパ頭の悪役ブ男な理由も分かった気がします。

 何かしみじみと謎が解けた気がします。(ちなみに少女マンガのジーフリトは、白馬グラニに乗ったサラサラ金髪の王子様です。^−^)

投稿時間:2002/06/30(Sun) 18:03
投稿者名:きよ
Eメール:kyamazak@ix.netcom.com
URL :http://home.ix.netcom.com/~kyamazak/index.html
タイトル:
ハゲネは隻眼か?
もうひとつ掲題しときたいことがあります。ハゲネのルックスに関することですが、ハゲネはハゲなのか...じゃなくって、隻眼なのかということです。そして、失った片目は、ちょっと年代もの漫画なんかでよくある十文字型の傷としてのこっているのか、それとも海賊のようにアイパッチをしているのか。

『ニーベルンゲンの歌』でも言及されてますが、ハゲネは昔、人質としてアッティラの宮廷で育ち、有力な将としてめきめきと頭角をあらわしました。(そのころのハゲネを知るフン人たちは、だから彼に一目おいてます-1756節-)。
 もうひとり、人質として頭角をあらわしたワルテルは、同じ境遇の人質の姫君ヒルデグントと恋に陥り、駆け落ちを遂行します。宴会の席で、酒にねむり薬を盛って、財宝をうばって逃げます。
 ハゲネは、もとは先代につかえてたのですが、今はグンテルが当主となっていて、そのグンテルは財宝ほしさにワルテルを追わせます。ハゲネは、幼馴染のよしみもあり、相手の力量も知っているので、あまり乗り気ではありませんがしかたありません。ワルテルは、追い詰められそうになると、財宝の分け前を明け渡すから見逃してくれと頼むのですが、グンテルは欲の皮はってつっぱねます。
 そこで、ワスケンの森(現:フランス領ヴォージュ)での有名な十一人切りとなります。そのとき「そなたは盾の上に坐って指をくわえて傍観おったではないか」とヒルデブラントが(2344節)なじります。

 この後、『シドレクスサガ』では、ワルテルが骨のかけらをハゲネに投げて、ハゲネは片目を失明することになっています。
 しかし、ドイツのラテン語詩『ワルタリウス』では、この後ハゲネとグンテルが待ち伏せして、(たしか野ばらの咲き乱れる野で)戦いとなり、ハゲネが片目、ワルテルが片手、グンテルが片足を失ったところで、お開きにして仲直りします。

 『ワルタリウス』のこの「バラの野」や、どうやら『ラウリン王』に取り入れられているようだとどこかで読みました。片手片足というところが、ラウリン王が課するバラ園を荒らした代償になっています。そういえば、眠り薬入りの酒を盛るところも似てますね。

投稿時間:2002/06/30(Sun) 22:06
投稿者名:岡沢 秋
Eメール:moon-over@mtf.biglobe.ne.jp
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タイトル:
片目もたぶんカッコイイ。
> ハゲネのルックス

 そうなんですよね。ワルテルとの戦いで片目をなくしているはずなのに、「歌」では、それは出てきませんね。
 もうひとつ、「歌」では、エッツェルが「ワルテルは逃げたが、ハゲネのほうは国に送り返した」とありますが、確かワルテルとの戦いの話ではハゲネも逃げてませんでしたか?

 シドレクス・サガは、「歌」より成立が遅いですよね。
 私が読んだものが、シドレクス・サガだったのか「歌」よりも前の時代の別のテキストだったのか分からないのですが、そのテキストでは、骨ではなく剣で目をくりぬかれた、となっていたように記憶しています。
 どっちみち、ハゲネが片目を失い、グンテルが片足を、ワルテルが片腕を失うという展開は同じのようですが。

 片目をなくしたハゲネ…どうなんでしょうね。
 言及されていないけれど、「歌」でもその設定は引き継いだのでしょうか。そのわりに「歌」関連の絵画でハゲネが片目になっているものは見たことがありませんが…。


>  『ワルタリウス』のこの「バラの野」や、どうやら『ラウリン王』に取り入れられているようだとどこかで読みました。片手片足というところが、ラウリン王が課するバラ園を荒らした代償になっています。そういえば、眠り薬入りの酒を盛るところも似てますね。

 そうですね。言われてみれば似てますね。
 眠り薬(&惚れ薬)って、このあたりの時代の話にはボロボロ出てくるのですが、そんなもん実際にあったんでしょうか。
 剣でダメなら薬って。
 魔法の代わりでしょうか。

 「シンフェイトリの死」では、シンフェイトリが毒杯で殺されていますが、シグルドを毒殺する展開もありえましたね。ハゲネが毒を盛るのは、さすがにちょっとカッコ悪かったかな。

+++
 ところで、ワルテルは「スペイン出身」と言われているけれど、実はフランス南部の出身だそうです。彼の国はピレネー山脈のこっち側。
 なんだかアバウトな地理感覚だなぁ…と、思ってしまいます。
 

投稿時間:2002/07/01(Mon) 14:25
投稿者名:きよ
Eメール:kyamazak@ix.netcom.com
URL :http://home.ix.netcom.com/~kyamazak/index.html
タイトル:
ワルテルについて
>ところで、ワルテルは「スペイン出身」と言われているけれど、
>実はフランス南部の出身だそうです。彼の国はピレネー山脈のこ
>っち側。
そうですね。そのじつはアキテーヌ(Aquitaine)のワルテル。アキテーヌというのは、ボルドー地方を含む、昔の一州(公国)です。スペインに近いことは近いです。アキテーヌに隣接した国がガスコーニュで、スペインが帰りのロランが襲われたのもじつはガスコーニュ人(Wascone)の盗賊団だったとか。

アキテーヌといえば、まず英国のリチャード獅子王の母親の(アキテーヌの)エレアノールが有名です。また、百年戦争時代、英国のエドワート黒太子(The Blacke Prince)の所領で、軍資金調達に、きびしく搾取されました。

あと、ジーフリトが、狩猟にさそわれて命を落とした森は、手写本Bでは「ワスケンの森 Waskenwald」(現今のフランス領ヴォージュVosges)ですが、写本Cでは「オーテンの森 Otenwald」(現今のOdenwald)となっています。ザクセンとの戦のつもりで出奔し、その帰りに戦じたくのまんま、狩猟に出かけたとしたら、後者の方が理にかないます。また、狩猟地は「ウォルムズからライン川を渡った向こう岸」であるとすれば、やはりオーテンの森ということになります(岩波の注釈も触れていますが)。

「ワスケンの森」の名が借りられたのは、いうまでもなく、ここがワルテルが、追っ手のグンテルやハゲネにお供したブルゴントの騎士を十一人切りした有名な場所(ワスケンの岩根のある場所)だからです。
さらに言うと、『ニーベルンゲンの歌』では、デンマルクの辺境伯イーリンクが、ワスケンの剣(Waske)を振るいますが、これは『ビテロルフとディエトリエプ』で、言及されるワルテルの剣ワスゲン Wasge(n)と同じとみなすことができると、英訳E-Textの註にあります。


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