ATEN ERASER PROJECT

アテン神 抹殺計画

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 時は、新王国。
 アクエンアテン王の暴走によってアテン崇拝が広まり、追放されていた神々は、今ようやくアテン神の危険性に気付き立ち上がり始めた。神々の間に出されたアテン神・抹殺計画。
 第十八王朝――信仰を見失い暴走する人間たちのもとで、王国は少しずつ、落日の時を迎えようとしていた…。

 とか言いつつ、歴史小説ではなかったりする。


作品no.36  バステト女神の場合。


 「っええ〜?! コレを『引き取って』、ですってぇ?!」
 言い付かったバステト女神は、うんざりした顔でアテン神を摘み上げた。うごうごして、いかにもアレな感じだ。
 「ちょーウザいのよねぇ。これ(アテン)。」
 「そんなこと言わないでさ〜。ねっ?
 トトも必死だった。
 アクエンアテンの王朝が潰れて以来、エル=アマルナの都にいっちゃん近かった彼の神殿は、捨てアテンの格好の餌食となっていたからである。神社の境内にヒヨコを捨てて行くのと一緒だ。神様なので道端に捨てるのは気がひけるが、他所さまの神殿の境内ならオーケー。
 「あんた断ればいいじゃない。」
 「だって…。神殿の前に『ここにアテンを捨てないで下さい』って張り紙しといても、すぐ誰か捨てていくんだもん…。頼むよ、バステト…。」
 「もー。仕方ないわねぇアンタはー。そういう気の弱いとこ、いまいちイケてないわよ。」
 「ごめん…。」
 「今回だけよ、ったく」
文句言いながらも、バステトは箱一杯ぶんのアテンを引き取ってくれた。その後、彼女はソレを、自室を改装してアテンを飾り、ちょっとイケてる感じのインテリアにしたという。


作品no.37  セルケト女神の場合。


 「ふぅん。で、配って歩いてるってワケね。」
 セルケトは、箱の中でうぞうぞ動き回っているアテン神をしばし眺めたあと、いきなりナイフを抜いてトトの喉元に突きつけた。
 「うっわぁ?! な、何す…」
 「裏切り者。」(目が本気)
 「えっ? う、裏切りって…」
 「アンタ、こーやってアテン神を再布教してるんじゃないのよ。どういうつもり? まさか、またあたしたちを追放させる気じゃないでしょうね。」
 「ち、違うよ! そんなつもりじゃなくて!」
 「信用出来ないわぁ〜…。そりゃアンタはいいわよ。あたしたちは居ても居なくても差し支えないかもしれないけど、アンタは書記官に必須の神じゃない。アタシたちが追放されても、アンタだけは居場所あるわけよねぇーえ?!」
 怒ったセルケトは本気で怖かった。黒髪の下から睨む一撃必殺の視線は女性でありながら暗殺者のそれ。毒針でザックリ刺されそうな勢いである。
 「ご、ごめん、もう頼まない…」
 「待ちなさい」
去りかけたトトの尾羽(トトはトキの神)を掴まえて、セルケトは不敵ににーっと笑った。
 「いいこと思いついたわ。そのアテン、引き取ってあ・げ・る。ウフフ…どんな顔をして死んでゆくのかしら、そのボンクラ神どもは」
 「えっ(汗)」
 「素敵な声で鳴いて頂戴。死よりも深い恐怖を与えてあげるわ…そう…弱いめの毒からジワジワとね…?」
 「!!!!」
セルケト女神は、ストレス解消にアテン神を使おうとしているらしかった。
 「ご、ごめん、そーゆーのは…」
 「何? こいつらの味方する気?! アンタも刺すわよ!」
 「いやっ…それはッ…(泣)」
 「じゃ黙って見てなさい。」
言うなり、セルケトはあれやこれやとても口では言えないようなことをアテン神に施しはじめた。アテンは悲鳴も上げずに、それにじっと耐えていたという。

 後日……
 彼女のもとから、虐待を受けて、ちょっと荒んだはぐれアテンが発生したとかいう。やはりアテンも精神的に参ってしまうと、ダークな世界に行ってしまうのか。
 拷問も得意なセルケト女神の恐ろしさを、今さらながらに知ったトトであった。


作品no.38  ソプドゥウ神の場合。

 ドゥアト産業の新入社員、アジアニック神のソプドゥウに、アテンを渡してみた。
 「何だア〜? コイツ。えらくプニプニして楽しいじゃねーか。」
 「あっ…あの…、引き取っ…」
 「いいけどヨ、こいつ、すぐ潰れんじゃねーの?(ぶにぶに)」
そうだった。乱暴なソプドゥウ神は、生き物とか飼えない人(神)なのだった。だが、トトは無理を承知で頼んでみた――「ダメ?」
 「いゃ。ま、死んでもいいっつんなら、飼ってやってもいいけどサ。」
ソプドゥウはアッサリ言って、アテンを引き取ってくれた。
 「しかしー…」
 「!」
いきなり、ナイフを振り上げるソプドゥウ神。「変わってんなー、コイツ…。」
 ざっくり。
 「うわあああ?!」 
 「なに悲鳴上げてんだよ、お前は。ったく、女みてーな奴だな…ん?!」
 「だ、ダメなんだ、切っちゃ…。」
彼らの目の前で、真っ二つにされたアテン神の体が分離したまま、それぞれが一つのアテン神なっていく。
 何の前フリもためらいもなくアテン神をまっぷたつにしたソプドゥウもソプドゥウだったが、平然と分離していくアメーバの親戚みたいなアテンもアテンだ。
 「うおお、すげぇ?! なんだーこれ、すげーぞオイ!」
 「ああああ…。」
 「おもしれー! ヒャハッ、ヒャハハハ! 死ねェ、そして砕けちれェ〜!!」
 「やーめーてーええええ!!(泣)」
かくして、切り刻まれたアテン神の体から、大量の小アテン神が発生し、分量が倍増しになったという。
 アテンを見つけても、決して斬ってはいけません。
 処分するときは、キチンと急所を潰してから焼却して下さい…。


作品no.39  セクメト女神の場合。

 「ふん。成る程な、始末に困っているというわけか。」
 「…始末って。」
セクメトは、腕組みをしてトトと、箱の中のアテンを見据えた。
 「それだけか?」
 「え?」
 「それだけで、いいのか?」
 「いや…だって…。」
箱一杯分でもたいがい手に余るアテンを、もっと寄越せという。破壊女神セクメト様はふところが広い?
 「大丈夫なんですか?」
 「ふん。この私がアテンごときに遅れを取るとはない」
何か、ヤな予感がした。遅れって。
 「アテンおそるるに足らず。私は何も恐れはしない! 下がっていろ」
 「……。」
トト、おそるおそる下がる。セクメトは、気をこめてカッと目を見開いた。
 「奥義! 焔桜花<ほむらおうか>!!!」
 「うわーーー!」
灼熱の赤い焔がアテンを焦がす! さすが破壊の女神様、室内でいきなり奥義ですか。

 「ふむ。いいカンジに焼けたな。」
セクメトはコンガリ焼けてプスプス音をたてているアテンをつまみあげた。
 「…(ぱく)」
 「!」
食った。
 「ふむ…。まぁまぁだな。もう少し(しゃりしゃり)」
 「…(涙)あううう…」
 「どうした。お前は食わんのか。」
 「い、い゛り゛ま゛ぜん」
 そのときトトは思った。セクメト様は怖い。優しいけど怖い。何が怖いって、アテンを食材だと判断するその感性だ。どう見たってそれは食べ物じゃないでしょう。いや、彼女は獅子の女神なので、とりあえず動くもので地上の生き物は、ぜんぶ「食」の対象なのか…?
 「今日の夕食はこれにしよう。食べていくか?」
 「……。」
トトは、アテンのあぶり焼きを台所に運ぶセクメト様を、泣きながら手伝ったという。


作品no.40  プタハ神の場合。

 「なんじゃ、これは。また妙な料理だな」
 セクメトの旦那さん、プタハ様は、食卓に出されたアテンを見て、ちょっと眉をしかめた。
 「トトが持って来たアテンだ。精がつくぞ」
 「…わしは食えん。こんなビカビカしたもの」
セクメトは太陽属性だが、プタハは闇属性で冥界3柱神(オシリス/ソカリス/プタハ)の一人なのだ。太陽神の一種であるアテンは、あまりお口に合わないらしい。
 「そう言うな。好き嫌いはよくないぞ。」
セクメトはちょっと悲しそうに、アテン神の皮(?)を剥いたものを持って来た。ぱっと見、素材がアテン神とは分からない。
 なんて言うか、…ニンジン嫌いな人に、ニンジン入りケーキ食わしたりするのと一緒…?
 「どうだ?(セクメト)」
 「ふむ。けっこういける。(プタハ)」
 「・・・・・・。(トト)」
最強の破壊女神の、意外な良妻ぶりに声も出ないトトだった。
 彼らはもしかして、いい夫婦なのかもしれない。


つっこみ(By ネフェルト炒りさん)
あてんは太陽の一種なのになんでセクメトさんの炎でぷすぷす焼けちゃうの?

回答(By 管理人)
 太陽の一種というより太陽属性の生物の一種…でしょうかね。
 しかも、アテンは「太陽の光」でセクメトは「太陽の炎」なので微妙に属性が違ってます。炎どうしなら対立もするんでしょーが、アテンは防御力ゼロな発光生物なので焼いて食うことも可。
 アテンのことは、光るクラゲか生きた蛍光灯くらいに考えてますが…。
 それ以前に、アテンを食うことに対するツッコミはナシですか?(笑)

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