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プタハ Ptah(仏語:Ptah)

古代名:ペテハ(ペト・タァ・ヘフ)/ギリシア名:プタハ/別称・別綴り:プター
性別:男性


――――寡黙なる太古の冥界神

主な称号
顔美しきもの、白き城壁の町の主、城の南に位置するもの、職人の中でもっとも偉大なるもの

主な信仰

常に四肢を体にぴったりとつけた死者の姿で現される神。古代エジプトの長い歴史の中、姿も信仰もほとんど変化しなかった稀有な神であり、動物の姿をとることはない。妻は荒ぶる雌獅子の女神、セクメト。息子はスイレンを神格化したネフェルテム。二柱とも太陽と関係のある日中の神のため、プタハ様とはライフサイクルがあわなかった気がするのだが、意外と家族関係は良好だった模様。トリノ博物館所蔵
エジプトを最初に統一した王朝が首都に定めたエジプトのちょうどド真ん中にあたる町が、プタハ神の信仰地・メンフィス。かなり古い時代から信仰を集めていた神の一柱で、少なくとも第一王朝初期には主要な神の一柱としての地位を確立していた。


●独立した神話体系を持つ主神として

プタハ神は、一部の神々を除き、他神との合体や同僚関係を結ばなかった。
ラー神、アメン神など国家の中心であった主神たちと関わりを持たないまま、自身の信仰を継続させた。ヘリオポリスやヘルモポリス系の神話と並び、メンフィス系神話とでも言うべき独自の神話を持ち、それによればプタハ神が世界を創造したことになっている。プタハを創生神とする流れにおいては、神統時代の始めに即位したとされる。

古代エジプトにおいて、神の権威は、その神に奉納される寄進物の価値でもある。神官たちは、寄進物の運用や神殿の持ち物である土地からとれる作物で収入を得ていたのだが、その土地の面積は、ラメセス時代で28平方キロメートルと推測されており、かなり広い。テーベやヘリオポリスと比べれば大したことがないが、国家の主神でもないのにそれだけの土地を持ち、安定した収入をもっていたことが、国家におもねることなく独自の神話体系を持ち続けられた理由のひとつだろう。
面白いことに、王権が弱まる時代になっても、メンフィスは独立国家になっていない。ナイル上流のテーベにあるアメン大神殿が王に反旗を翻し、勝手に神官国家を作ってしまう頃になっても、メンフィスはメンフィスのままだった。エジプト全体を支配したいと願うような支配欲はなかったのだろう。

また、「プタハ」のつづりをバラして各音に意味をもたせると「ペト・タァ・ヘフ」→ペト(天)タァ(大地)ヘフ(永遠)…となり、宇宙神的な性格が伺える意味合いになっている。末期王朝時代までには、プタハ神は宇宙神としての属性も持つようになっていた。


●職人の神として

プタハ神は、第一に、「神々の鍛冶屋」であり、製造業にたずさわる職人たちの守護神である。
鍛冶の神といえば、どこかしら体に不具合があるのが世界の神話の法則である。(ヘパイストスしかり。)しかしプタハは、肩書きを見ても分かるとおり、五体満足で、しかも容姿が美しいことになっている。体に不具合を持つ神の神話は、鉄の精製技術とともに伝播した神話の産物とされる。エジプト文明は、まだ鉄器が無い時代から文明が盛り上がっていたもので、プタハ神は青銅器時代の鍛冶の神なのだ。そのへんの違いかもしれない。

鍛冶で使う鉱物は地下資源であることから、プタハは、タテネンなど地下世界の神とつながりを持つ。
また、メンフィスいがいでは職人村で信仰された。冥界神であることと、姿が死せる王を模していることから、卓越した技術を齎した太古の王が神格化されたものが原型ではないかと推測されているが、ヒエログリフが使われだす以前から信仰されていた神らしく、その起源ははっきりしない。

カラーで描かれるときは、オシリス同様、皮膚は緑になっていることが多い。


神話
・エジプト最古の首都が築かれた土地の守護神だけに、当然のように「創世神」とされた。プタハを世界創造の神とみなすメンフィス神学という独自の神話体系を持っていた。その内容は、「シャバカ石」と呼ばれる碑文によって知られている。

・メンフィス神学におけるプタハは「アトゥム神の父」、「九柱神の心となり舌となるもの」であり、ヘルモポリスの神話における原初の八柱神のうち、「ヌン(原初の水、男神)」「ナウネト(対応する女神)」を分身とする。
また、エジプト統一王朝の最初の首都がメンティスであったことから、「上下エジプトを結びあわせしもの」とも呼ばれる。

・世界創造は、プタハの持つモノを作る力と繋がっている。太陽の卵と大地を作り出すことが出来たとされる。

・ちなみに、称号の「城の南にいるもの」は、メネス王によって築かれた城の南側に神殿があったことから来ている。その城壁は、度重なるナイルの氾濫と戦火によって、現在は完全に失われてしまっている。

聖域
主にメンフィス
その他、手工芸の盛んな地域――カルナック、ディル・エル・メディーナなど

メディネト・ハブのラメセス3世葬祭殿には、プタハ神に祈りを聞き届けていただくべく建設された「聞き届ける耳」の礼拝所が存在する。写真をよく見ると、壁にばばーんと描かれたプタハ神の前に、見事なセクメト奥様の坐像が。もぅバッチリ祈りが届きそうです。 しょーもないことお願いするとセクメト様に焼かれそーですが…。

DATA

・所有色―土、火
・所有元素―青緑、黒
・参加ユニット―メンフィス三柱神<プタハ、セクメト、ネフェルテム>、冥界神ユニット<オシリス、ソカル、プタハ>
・同一化―オシリス、ソカル、たまにタテネン。
・神聖動物―雄牛(アピス)
・装備品―儀式用のつけヒゲ、アンク、ウアス杖、ジェド柱。頭にはぴったりした頭巾を被り、現世での王冠や生者のカツラを身に着けることはない。


◎補足トリビア◎

アブ・シンベル神殿の最深部にはプタハ、アメン・ラー、ラメセス2世、ラー・ホルアクティの神像が並んでいる。毎年二回、春と秋に神殿内部まで朝日が差し込むが、そのときでもプタハ神の像にだけは光が当たらない。これはプタハ神が冥界神だからと言われている。
(右の画像はデイヴィット・ロバーツのイラスト。いちばん左の顔が欠けているのがプタハ神)



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