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【エジプト限定】オーパーツコレクション

ピラミッドは鉄器で作られた?


その昔、「スフィンクスの足元から出てきた鉄器というものがあるらしいよ」と聞いて、ナンノコッチャと思ったことがある。そんなものは聞いたことがない。アビドスにある隕鉄の話なら知ってるが…。いや、そもそも、古代エジプトって鉄器があったことになってんの?

と、いうわけで調べてみました。
写真はこちらのページに載っているものをご参照くださいね。と。

さて、この「ギザ大地で見つかった鉄片」だが、調べていくうちにトンでもないことを知った。
発見されたのが1837年。発見したのがJ.R. Hill という人なのだが、なんとクフ王のピラミッドの「シャフト」の隠された出口を探そうとしてピラミッドを爆破したらしい。(※カフラー王のピラミッドだという説も聞いた。どっちが正しいか分からないが、カフラー王のピラミッドの北側にある爆破跡のようなものはマルムーク朝時代のものである)

ムチャクチャである。

ちなみに「シャフト」というのは、ピラミツドの中にある部屋から外に向かってナナメに延びている狭い通路のことで、人は通れないから、空気穴としてか、もしくは宗教上の理由から、作られたものだろう、とされている。

断面図

ただ、このシャフト、4本のうち2本は外に貫通しているのでまだいいが、下の部屋から延びている2本については、貫通せずに途中で終っていて、空気穴としての役目さえ果たしていない。
シャフトとは、何のためにあるのか? もしかして、通路の先には秘密の部屋があったりするんじゃない??
…と、まぁ、昔から学者たちのワクテカ議論の的になっている構造なのである。

それをな。
そのシャフトの先を知りたいのは分かる。うん、気持ちは分かるよヒル君。
でもな。

 爆破しちゃダメだろ。

ピラミッド爆破はクフ王のピラミッドに入りたくて、入り口のありそうなところをテキトウにぶっ壊してみたアル・マムーン時代からの伝統とはいえ、現在であればエジプト考古学局にソッコーで止められるような危ない「調査」も、この時代にはまだOKだった。ちなみにシャフトはピラミッドの南北に伸びている。北側は観光客の出入りする入り口で、そちら側には爆破痕はないようなので、南側を爆破したのだろう。


…と、そんなわけで、この「鉄のプレート」なるものは、ぶっちゃけ言うと、どんな状態で、正確にはピラミッドの何処にくっついていたものなのかが全く不明なのだ。吹っ飛ばされた石の片付けをしていたときに、ヒルがたまたま見つけたものなのである。

この時点でどーなのよ、と思うかもしれないが、まぁ少し我慢してもらいたい。

見つかった鉄は 長さ26cm、重さ750gほど。「Iron Plate」と呼ばれているが、写真を見て思うように、実際には人工的なカタチをした「プレート」ではない。厚さも場所によってまちまちな、かなりデコボコしたシロモノである。

これをもってして、「ピラミッド建造には実は鉄器が使われていたんだ。そらみろ、鉄もなしに、あんなものが作れるかっつの!」と、主張する人もいる。
確かにこの鉄は古いものである。
鉄の表面に、ピラミッドを形成している石と長年触れ合っていた痕跡があるため、近代のものとは考えられないという。

だが、残念ながら、この鉄は7.5%がニッケルなので、地球上のものではない可能性が高い。
つまり隕鉄でほぼ確定。

空から飛来した隕石がピラミッドに衝突。石と石のスキマに食い込んでそのまま眠っていた、という推測をした人がいたが、それは正しいかもしれない。専門知識がないので断言は出来ないが、隕石だって、摩擦熱で熱くなってる時に石積みに突入すれば、平らに変形するかもしれないのだ。

#埋まってた部分の石に、熱に溶けたような痕があれば良かったのだが…。
#全部爆破したヒルが悪い。


さて、それでは、表題になっている「ピラミッドは鉄器で作られたのか」という話に移ろう。
上述したように、ヒルがギザ台地で見つけた鉄器については、ピラミッドが鉄器で作られたという決定的な証拠にはなりえない。

その鉄片は地上で人工的に作られたものではない。
道具の形にもなっていないことから、古代エジプト人が鉄を道具として使ったとも言えない。
そして、ピラミッドの周辺から、他に鉄は1つも見つかっていない。
石を運び上げるのに使った滑車や、ころ、測量器などは沢山見つかっているのに、である。

何十年もかけて、のべ何十万もの人々が毎日、毎日、石を積み上げていたのに、その人たちが使ったと主張される鉄器の実物がない。
鉄の楔で石を切り出していたのなら、一つや二つは実物が出てきたっていいんじゃない?

出てこないということは、ピラミッド建造に鉄器は使われていない可能性が高く、現状、ピラミッド建設に使われたのは木と青銅の道具である、と見るのが無難だろう。


ちなみに、古代エジプト関連で見つかっている「鉄」というのは、他には、紀元前2500年ごろのものとされるアビドスの鉄塊、ヌビアの神殿にある紀元前1800年ごろの鉄塊、の2つだそうだ。
どちらも人工的に精錬された痕はなく、道具の形はしていない。

たった三例しかない、実際に使われた「道具」としての鉄がない。という状態では、まぁ古代エジプト人が鉄器でピラミッドを作ったなんて、普通は思わないだろうなぁ…。



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