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第七十九章

ヌウのパピルスより


主なる君の、宇宙の主へと変化するの章。

印璽監督院の監督にして勝利を得たるヌウ曰く、
「我はアトゥム神にて、天の創造者、地より出現せる者、蒔かるる種を現存せしむ者、神々を生む者なり。
 我は自らを創れる、大いなる神、生命の主、神々の群れを栄えしむる者なり。

 今、汝らを拝礼し奉る。おお、汝ら聖なるものどもの主よ、その形は隠され、神の廟は神秘のうちに隠されたる。
 今、汝らを拝礼し奉る。おお、汝らケブ(ゲブ=大地?)の氾濫の地の神々よ。
 今、汝らを拝礼し奉る。おお、汝らテナイトに住まう神々よ。
 今、汝らを拝礼し奉る。おお、汝らアメンテト(西=あの世)に住まう神々よ。
 今、汝らを拝礼し奉る。おお、汝らヌウ(天)に住まう神々よ。

 願わくば、汝ら、我を汝らのもとへ至らしめよ。我は純潔なる者なり、我は聖なればなり。我はカー(魂)なり、我は力強き者なり、我は霊魂を授けられし者なり。
 而して、我は汝に香料と、芳香の木と、天然ソーダを供せり。
 我は汝の口より我に流るる唾を終結せり。我は来たれり、汝らの所持するすべての悪事を終結せり。すべての善きことを齎せり。
 我は、汝らの前に正義と真理(マアト)を来たらしめる。
 我は汝らを知り、汝らの名を知る、未知なる汝らの名を知る。
 而して、我は汝らとともに存在に至る。
 我の来るは、人類を食らい、神々を食物とする神に来るに同じ。我は、己の安定の地にありて崇められる神々のごとく、汝らとともに強し。神々は喜んで我に来たり、女神たちは我に嘆願す。我は、汝らの聖なる二人の娘の如く蘇れり。我は我が席を地平に取れり。

 我は我案の上のすべての供物を受ける、夕刻、灌祭を飲む。
 我来たれば喜びの声をもって迎えられる、而して地平に住まう聖なる者らはみな、我、すなわち聖なる霊(サア)、また聖なる者らの上に讃美を帰す。我は、大神殿の住まう神々の如くに崇められる。而して神々はヌトの体より我が美しく生まれいづるとき喜ぶ。」


※テナイトが何なのかは、訳した人にもわからなかったらしい。R.O.Faulknerの英訳では「Radiance」となっていた


▽ポイント解説

新王国時代は、宇宙の神アトゥムと太陽神ラーが習合してアトゥム・ラーという神になった時代。
と、いうことで、この呪文の最初で語りかけられている「アトゥム」とは、太陽神「ラー」のことでもある、と見ればいい。

ヘリオポリスの神学では、アトゥムは原初の神であり、すべての神の父。
自分は清い者だし神々への供物も怠らなかった、その父と同化する権利がある、と前置きした上で、子孫である神々よ、私をあなた方と同じ永遠の世界へ連れてってください〜、と、言ってるんだと解釈。

最後の「ヌトより生まれいづる」とは、太陽が天の神ヌトから生み出されるさま、つまり日の出を意味していて、来世への再生を祈願する文章になっている。(と思う。)


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