シャルルマーニュ伝説
-The Legends of Charlemagne

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つっこみルネッサンス

ロランとオリヴィエの友情物語


 ロラン→フランス語、オルランドゥ→イタリア語
 …と、いうことをいちおう最初に書いておく。ここで挙げる物語はイタリア語からのものなので、オルランドゥのほうが正しいのだが、このページだけはロランと表記する。

 ロラン(オルランドゥ)の出生に関する話は、書いた人によって多少違っているが、オリヴィエとの親友関係や、不義の恋によって生まれたというところは、同じなようだ。
 ロランの父親は、古い物語の形式ではシャルルマーニュだったらしい。
 母親はシャルルマーニュの姉(または妹)のベルタなんだから、ロランは近親相姦の結果生まれた子供ということになる。とんでもない話だ。キリスト教徒だろ。
 …しかも、母親は追放されている。

 何考えてるんだシャルルマーニュ。

 そんで、追放された母親が、あっちやこっちに旅したことになってるために、物語によって、ロランの生まれた場所が異なってくるわけだ。
 それにしても、近親相姦で生まれるって、何だか「アーサー王伝説」のモルドレット似じゃないか? モルドレットと違って、ロランは反乱は起こさないし、王のために戦って、王より早死にするけどさ。
 そこらの違いは、もしかすると親友の存在によるのかもしれない。
 モルドレットには居なかった素敵な親友・オリヴィエ、熱しやすいロランと違って、クールな頭脳派。彼がいるからこそ、ロランは多少、良識的に生きられた。
 ただ、ロランの生まれる場所がバラバラということで、幼馴染オリヴィエの素性も巻添え食らって物語によって異なってくるわけだが…

 ルネサンス期の話では、もう一つ、ロランの父親がミロン(ミローネ)だという話もある。
 このミロンは、シャルルマーニュの遠い親戚だったが、王の姉妹ベルタとこっそり通じて、孕ませてしまう。
 昔は、結婚してもいないのに子供作るのは恥さらしの大罪。(ゲーテの「ファウスト」にも、そういう場面が出てくる)王はベルタを追放し、ベルタとミロンは田舎の洞窟に隠れ住むが、やがてミロンは妻を捨てて、栄光を求めて旅に出てしまう。
 ひでぇ話だ。
 パルチヴァールといい、騎士ってだいたいそういう種族だと思うけどさ、ミロンよ、いくら何でも身重の妻を洞窟に置き去りはひどいだろう。仮にも姫様だぞ。

 ここで絶望して野垂れ死んだら話は一巻の終わり、じゃない、一巻で終わり(笑)。
 しかーし! 王家の血筋は強かった。城がなくてもドレスがなくても、根性だ根性ッ。ベルタは無事に赤子を産み落とし、しっかりと育て上げるのだった。
 それがロラン。貧乏なので着るものもロクになく、素っ裸同然の野生児として逞しく育った彼は、町長(領主?)の息子オリヴィエとガキ大将決定戦で熱く激しく戦い、戦いの果てに強い友情で結ばれた。男のロマンである。

 そして、このとき、ロランの根性に感服した町の子供たちが、家から持ち寄った布できれっぱしの服をこしらえてくれたのだが、これが赤と白の布のつぎはぎだった。
ロランの盾の紋章は、この赤と白のつぎはぎを元にしたデザインから来ているのだという。
 「俺は騎士になっても、お前たちのことは忘れない…あのときの友情は永遠だ!」
 いい話じゃーないですか。

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 さて、そんな感じで野に生まれてしまったロラン君。そんなロランが、どうやってシャルルマーニュのもとに行ったのだろう?
 物語では、こうなっている。
 シャルルマーニュがローマへ戴冠式に行く途中、たまたま、ロランと母親が貧しい暮らしをしている町の近くで幕営した。
 乞食同然の暮らしをしていたロランにしてみれば、王の宴のゴージャスな食べ物を見て我慢しろというほうが無理だった。飢えたお子さんは、たちまちのうちに野生をあらわし、テントへ殴り込み。本能のおもむくまま食べ物を略奪した。
 シャルルマーニュは騎士たちに少年の後を追わせる。そして、ロランがまさに棍棒で騎士たちを殴り飛ばさんとした時、母親ベルタは、その騎士たちの紋章に気付き、自分の元の身分を明かすのである。

 かくしてベルタは、騎士たちのとりなしもあって、兄(弟?)シャルルマーニュと和解した。
 そんな簡単に和解できるんだったら、いなくなった血縁者の行方くらい探せよ、とか思うんだが。
 シャルルマーニュはロランを連れて行き、騎士として育てることにする。そして、ロランは、大帝いちばんの”お気に入り”と、なるのであった。

 …今時、女性週刊誌のマンガでも思いつかねーよ、そんな展開(笑)

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 このあと、ロランとオリヴィエが再会するくだりについては、少し曖昧な部分がある。
 話によっちゃ、シャルルマーニュと出会う前に一緒に巨人退治になんか出かけているみたいだし、別の話では、オルヴィエがシャルルマーニュと敵対する一族の代表者として登場し、ロランと一騎打ちするはめになる。

 なお、この一騎打ちは、ハルトマンの「イーヴェイン」クライマックスで、ガーヴァーン卿(ガウェイン)とイーヴェインが一騎打ちをするシーンとだいたい同じ。
 双方、代理人として一騎打ちに臨み、決着がつかず、兜を外してみると実は親友だった…という。
 互いの姿を確認した二人は戦いを止め、双方の一族が仲直りしたことにより、以後はともに戦うことになる。
 そして、最期のロンスヴァルの戦いで、運命を共にするのである。死ぬまで一緒だ、男の友情! まさに竹馬の友――。


 ……だが、ロランが女にうつつを抜かしていたときは止めなかった(止められなかった)んだよね、オリヴィエ。^^;



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