シャルルマーニュ伝説
-The Legends of Charlemagne

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つっこみルネッサンス

愛は風の如く−絆−


 ルネサンス期の騎士さんたちに、牢抜けのスキルは無いのであった。
 無駄に優美典礼を重んじるがゆえに実際的な能力を忘れてるというか、たくましく戦国を生き抜く力は何処よ? と言いたい(^^;
 牢で酷い扱い受けつつ、助け出されることを待っていたロジェロ、その彼を助けたのは、ほかならぬギリシア皇太子・レオであった!

 彼は、自国の兵を惨殺したにもかかわらず、戦場で見た勇敢な騎士に恋心興味を抱き、叔母を説き伏せてロジェロを解放しにやって来たのだ。しかし相手が自分の恋敵だとは知らないロジェロ。単純もいいとこで、好意的に迎えてくれたレオをあっさり信用。堅い友情を結び、「命の恩人のあなたのために何でもしましょう!」…なーんて、言ってしまったのだ。

 ここで、少し話を戻る。
 ロジェロがギリシアへ旅立ったあと、ブラダマンテは一計を案じた。父母の勧めを断って、自分の望む人と結婚する方法――、それは、自分と戦って負けなかった男だけが、自分と結婚する資格を持つ、と、いう条件を提示することであった。
 ブラダマンテは女だてらにメチャ強い騎士だった。そんな彼女を負かせる男など、世の中そうそういるはずもない。否、彼女は、ロジェロだけだと思っていた。
 貴婦人なのに、試合で夫を選ぶって。戦乙女? ブリュンヒルト(叙事詩「ニーベルンゲンの歌」に登場する)の真似??

 だが、そんな周囲のツッコミも、この栄光あるフランス王家には通じないのであった。
 シャルルマーニュの公示によって、それは、あまねく近隣諸国へと触れられる。かくて、求婚に来た男たちは、己のホレた女がいかに凄まじい人であったかを知るのであった…。

 …もちろん、ギリシアの皇太子とて、ブラダマンテの愛は欲しかった。
 しかし、彼女に勝つことは到底出来そうも無い。そこで、戦場で見た勇敢で力ある騎士、ギリシア軍を壊滅状態に陥れたロジェロに、身代わりになって行って来い、というのである。
 要は、使いっ走りである。「ニーベルンゲンの歌」のグンテル王と同じく、卑劣な行為に走ろうとしたわけだ。

 恋敵に思い人を渡すために戦わされるなんて、もちろん屈辱である。(※レオはブラダマンテとロジェロが恋仲であることを知らない)
 …が、哀れなほど正直者で義理堅いロジェロは、命のお礼に何でもするといった約束を翻すことが出来ず、レオの頼みを引き受けてしまう。

 利用されてるんだよ、気づきなよ!

 思い起こせばフランスvsアフリカの戦い前。
 魔法使いアトラントに育てられていた彼を連れ出したのも、彼を利用しようと企むアグラマンの配下の者たちであった。
 利用されるだけされて、最後にはポイ状態、というより完全に忘れられてしまっていたロジェロだったが…。やはり、使い捨てされる運命の人ですか^^;

 ちなみに、ブラダマンテへの求婚は真剣勝負のため、負けたら死ぬのである。
 もちろんブラダマンテを殺したら求婚に来た意味がないので、相手を殺さないよう、傷つけないよう身を守りつつ、指定時間内を生き抜かなくてはならない。
 とんでもなくムチャな申し出なのだが、そんなのに引っかかって死んでった男たちもいるんだね。

 ロジェロとてもそれは同じ(何しろフル装備の鎧では顔なんて分からないし、レオ皇子と名のって試合に出なくてはならないのだ)。
 愛する人に殺されるんならそれも一興、と、思いつつ、それでもやはり、彼は死ねないと思った。
 戦いが始まる。ブラダマンテは、相手がロジェロだとは知らないから本気で打ってかかり、殺そうとする。だがロジェロのほうは、必死で身を守りつつ、わざと鈍くした歯で攻撃を受け流すのみ。
 やがて時が過ぎ行き、試合の時間が終わる。ロジェロは生き残った。人々は、それがギリシアの皇太子だと思っているから、ブラダマンテは自らの公約に従ってその人と結婚するのだと既に思っていた。
 命の恩人との約束を守り、恩義に報いることは出来たものの、ブラダマンテと己の心を裏切ってしまったロジェロは、深い絶望の中にあった。

 ブラダマンテは、悩む。
 自分で言い出した約束を破るなど、許されるはずもない。だが、それは自分と対等に相手はロジェロしかいないと思っていたからだし、もしかしたら、ロジェロが現れた時は手加減するつもりだったのかもしれない。
 だが、実際に現れ、条件を満たしたのは、ロジェロではなかった。いっそ約束など破ってしまおう、と思い始めていた。

 そこへ救援の手を差し伸べたのが、彼女の兄リナルドとオルランドゥ(なんでのこの男が入ってんだよ)、そして、ロジェロの妹マルフィサだった。
 マルフィサは言う、自分の兄は、以前からブラダマンテと結婚の約束をしており、その彼に優先権がある。かつては異教徒であったとしても今はキリスト教徒、約束は守られるべきだ、と。(ってことは異教徒との約束は守らなくていいのか、キリスト教守護国の皆さん…)
 娘を大国の王妃にしたい父エイモン、母ベアトリーチェは憤慨し、間に挟まれたシャルルマーニュは、どうしていいのか分からない。
 「では、こうしては。ギリシアの皇太子と、そのロジェロとを戦わせるのだ。そして、生き残ったほうがブラダマンテを妻とせよ」
これは、いい案だと誰もが思った。力づくの解決だが。

 ギリシアの皇太子は、またしても、ロジェロの助けを借りに彼を探しに行った。
 ロジェロは恩を返したのに…もう解放されてもいいだろーに…。

 深い絶望の中にあったロジェロは、やって来たレオに真実を語る。
 自分はロジェロで、自分が生きている限りブラダマンテは誰のものにもならない。彼女を妻としたいのなら、自分を殺せ、と。
 これを聞いたレオびっくり。ま、ロジェロがロジェロ自身と戦うことは出来ないわけで、すでに、勝負は決まってたというわけだ。

 結局彼は、愛より友情をとった。すなわち、自分の身代わりにブラダマンテを勝ち取ったのがロジェロ自身であることを公表し、自分の求婚を引っ込めたのである。個人的には、戦っている鬼のようなブラダマンテを見てビビったのが一番の理由ではないかと思うのだが、そんなことはどこにも書いていないので、ま、勝手に思うに留めておく(笑)

 ロジェロはめでたく(そしてようやく)、ブラダマンテを勝ち取った。
 ついでに、以前ギリシアとの戦いでロジェロに助けられたブルガリアの人たちは、自国の王家を見限って、かわりにロジェロに王様になってくださいと言いに来た。
 ブラダマンテの両親は、娘が王妃になれることで大喜び、ブルガリアの人にとってみれば、ロジェロを王様にしとけば、もう、ギリシア・フランスとは戦争しなくて済むわけだから棚ボタラッキー。

 てなわけで、2人の結婚は周りにとって、大いに祝福すべきものとなったわけである。
 なお「ハッピー”エンド”」の名に相応しく、シャルルマーニュの栄光の時代は、ここで終わる。
 次回いよいよ最終回。栄光の帝国に何が起こったのか――物語の終わりへと。


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