シャルルマーニュ伝説
-The Legends of Charlemagne

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つっこみルネッサンス

姫様の逆襲〜男たちの聖戦〜



 さて、その頃アンジェリカの国がどうなっていたかというと、…アンジェリカにフられたタタールの王・アグリカンによって、激しく攻撃されていた。
 姫様が求婚はねっつけたせいで戦争になるのは、ルネッサンスの騎士文学では「お約束」である。マジでマジで。んで、そこに華々しく真打ちが登場して姫様を救い恋に落ちるのがお約束なわけね。女は所詮、戦利品ね。あははん。

 戦況は芳しくなく、ガラフロン王は、同じくアンジェリカにホレているサクリパンに救援を依頼。サクリパンとしては、当然、「この戦いに勝利したら、アンジェリカ姫が振り向いてくれるんですか?!」とか、期待して救援の求めに応じたわけである。
 (アンジェリカにゃその気は全く無いが。)

 旅に出たアストルフォが出会ったのは、まさに、そのサクリパン王だった。サクリパン王は、アストルフォの格好にいたく感銘を受け、ぜひ一緒に行こうと申し出るのだが、アストルフォは「ボクには道連れなど必要ないよ、ジュッテーム!」…と、断って一人で行ってしまった。

 アストルフォの何処らへんがどう気に入ったのか、…いや、確かに只者ではないんだろうけど、どこが気に入ったのかは…、是非ともお伺いしてみたいところだが、それはともかく。よっぽどホレ込んだらしく、サクリパンは、自分とこの軍おいといて、アストルフォの後を追っかけてってしまった。
 こうして、男たちの運命の歯車は、どんどん狂っていくわけだね(笑)

 一人でゆくアストルフォが出会ったのは、乙女を連れた騎士。(※これもお約束です)
 騎士の名はフロリマール、シルヴァン・タワーの領主だった。連れている乙女は彼の恋人・道案内のフロルドリ。二人はラヴラヴである。
 騎士の基本として、「出会ったらとりあえず戦っとけ」に則って、アストルフォはいきなり、フロリマールに挑戦した。
 彼は魔法の槍持ってるんで、当然、負けるワケがない。あっさりと勝利。絶対に相手を突き落とせる槍に、リナルドからの借り物である名馬バヤール。どんなクズ騎士でも負けません。イカサマです。が…。

 アストルフォ「フフ…ボクの美しい勝利だね?」
 フロリマール「くッ…。かくなる上は…!」

騎士の決闘、負けたら身包みはがされて言うなりである。
恋人を取られると思ったフロリマールは、屈辱のあまり自殺しようとするが、アストルフォはやさしく彼の手を押し留める。

 アストルフォ「そんなに嘆くことはないよキミ。ボクはキミの美しい友情が欲しいだけさ…、愛するご婦人は、キミの手の中に残して置こう。」
 フロリマール「おお、なんと寛大な。ありがとう、このご恩は一生忘れまい」

…本当に、それでいいのか?
 自分が圧倒的に優位だということを知らず、すべて自分の実力だと思い込んでいるアストルフォ、イカサマ試合に全く気付かず、アストルフォをよい人だと思い込んでいるフロリマール。
 どっちもどっちだ。

+++
 さて、こうして、彼らはともに旅を続けることになった。行く手には魔法の城が控えている。道案内のフロルドリは、その城へむかう橋に乙女が立っており、ここを通る者は杯を飲むならわしだと言って魔法の飲み物を出してくるが、絶対に受け取ってはならない、と、「前もって」忠告する。
 アストルフォはしっかり覚えていたので、橋を渡るとき、杯を拒絶した。

 アストルフォ「ふふん…ボクはそんなもの飲まないよマドモアゼル。申し訳ないが」

と、言うなり乙女はキレだし、杯を地面に叩きつけると炎は湧き上がった!
 「来たれ騎士たちよ。この者をひっとらえよー!」(指パッチン)
城から一斉に飛び出してくるのは、忘却の杯を受けて、魔女のトリコとなってしまった騎士たち。その中には、なんと、あのオルランドゥもいた…!

 こんなとこで何しとんねん、アンタ。
 ずっと捕まっとったんかい。

アストルフォ「おおぅ…なんてことだジーザス。マイ・フレンド、キミまでもがボクの敵に回るのかい?」

 アストルフォは、今の自分なら勝てると思いつつ「友人とは戦えないよ…マイ・フレンド、いつかキミをそこから助けてみせるさー!」とか、薔薇の花飛ばしつつバヤールの俊足で駆け去ってしまった。
 なんだ。結局見捨てて逃げたんじゃん。

(余談だが、この「橋の乙女」、北欧神話で言うとこの、ヘルの館に通じる橋を守ってる乙女に似てる気がする…。)

 で、その後やって来たフロリマールは、恋人がキチンと説明しといたにも関わらず、杯飲んで城に囚われてしまうのであった。
 残されたのはフロルドリただ一人。そう、アストルフォは彼女のことも省みなかった。
 婦人奉仕の心はどうしたっ?! 婦人奉仕は!

 そして…。
 東へと走ったアストルフォは、アンジェリカの国へたどり着いてしまい、「なんだ、リナルドはまだここに来てないのかー」ってことで、アンジェリカを救うための軍に入ってしまうのである。
 おい。

 アンジェリカは、最初から、見目よく、お金持ちな彼に好意を抱いていたので、(※前の話参照)アストルフォは姫様の親衛隊に組みこまれてしまった。
 またんかい。

 かくして戦いは始まった。
 美しきアンジェリカ姫の指し示すまま、なすがまま、男たちは身を削り命をかけた戦いへ。理由などなくていい。愛<ミンネ>が彼らを突き動かす。…それが理由だ!

 アンジェリカ「さぁ騎士たちよ。戦いなさい…わたくしのために!!!」
 騎士たち「アイサー! 姫様!!」

 サクリパン(味方)vsアグリカン(敵)。色気も魔法の一種だろう。
 混戦の中、囚われてしまうアストルフォ。刃を交える指導者たち。戦況はかなりアンジェリカに不利だ…どうする姫?!

 アンジェリカ「結構です。お前たち、ここで籠城していなさい。わたくしが行って救援をもとめてきます」

…ええ? ひ、姫様おん自ら、しかもお一人で?
 ここで忘れちゃいけないのは、姫様は魔女だってこと。実は、そこらへんの騎士たちよりはるかに強いから。魔法でちょちょいっと城を脱出、さくさくと目的地へ向かう。
 さて彼女が向かった先とは…?
 それは次回のお楽しみ。


[そろそろ、本来の主人公たちが復帰しそうな予感。]



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