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エレシュキガル

別名・別綴り/アッラトゥ(アッカド語)/イルカルラ
性別/女性
守護都市/クタ


【主な役割】
冥界の女王

【神話・資料別エピソード】
キガルは冥界(クル)の別名。シュメールの冥界の女王。
夫ネルガルとともにクタで信仰された。アッカド王朝末期のウンマ市のルトゥ王が捧げた碑文によると、冥界は西方にあると考えられていたようで、「日の沈むところの女主人」という美称を与えられている。

エレシュキガルの支配する冥界(クル)は、すべての死者が赴くところであり、一度行けば二度と戻れぬとされている。七つの門で生者の世界とは隔てられており、イナンナやネルガルような神でさえ、赴けば帰ることは容易ではなかった。エレシュキガルの宮殿ガンズィルは門の内側、冥界の入り口にあるとされた。

彼女の家族関係は、イナンナなどの有力な神々と同じく、時代やエピソードごとに異なっている。

「イナンナの冥界下り」ではイナンナの姉とされており、夫はグガルアンナ(故人)。
アッカド語版の「イシュタルの冥界下り」でもグガルアンナが夫とされ、息子がニンアズになっている。
「ネルガルとエレシュキガル」ではネルガルを夫としている。
ヌンガル女神は彼女の娘とされている。
エンリルとの間に息子ナムタルをもうけた、としている場合もある。疫病の神ナムタルは、エレシュキガルの伝令/家臣として登場することが多い。

エレシュキガルは、天上における有力神エンリルのように冥界に宮廷を持っていた。構成する神は以下のとおりである。

 ・書記 ゲシュティンアンナ
 ・執事 ニンギシュジダ
 ・行政官 パビルサグ
 ・伝令 ナムタル
 ・門番 ネティ
 ・舟番 フブル

エレシュキガルは座して冥界にて使者を待つだけの女神ではなく、何らかの条件で死者を定め、能動的に死者を冥界へ呼び込む神でもある。エレシュキガルに「死を定め」られた者の病は決して癒えることがないため、身代わりの動物を殺すか、擬似的な葬儀を行って死を偽る方法がとられていた。
なお、メソポタミアの神話では、冥界の神に裁判官の役割はなく、死者の生前の行いが裁かれることはない。

●シュメールの世界観

冥界の情景は時代が進むごとに詳細になっていくが、主にバビロニアの思想では、「エレシュキガルのおさめる冥界(クル)はエンキの棲む深淵(アプス)よりも下にある」「アプスは湿っているが、クルは乾いている」というイメージである。冥界の詳しい情景が出てくる神話には、ギルガメシュ叙事詩の冥界下りの部分など。

新バビロニアの思想では、さらにイメージが細分化され、世界は六層に分かれていることになった。

 ・上の天→アン神を中心とした上位の神々の宮廷のあるところ
 ・下の天→星々と下位の神々のすむところ
 ・人間界 メソポタミアの文明圏は「カラム」、周辺が「クル」 ※冥界もクルと呼ぶので混同しないように
 ・深淵
 ・冥界

これだけだと冥界は地下にあるように読めるが、冥界にいるはずの死者が天のアンの宮殿で門番をつとめる、などの冥界が天にあるとする思想も同時に存在していて混ざっている。

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【参考】
神話についてはネルガルの項を参照

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