中世騎士文学/パルチヴァール-Parzival

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ヴォルフラム名(迷)言集(2)

前ページより引き続き、約800年の時を越えてきた師匠渾身のボヤキをお送りします。


(第6巻 296節)

彼はまったく立派な人物であった。私の意見に同意する者がどんなに少なくても、ケイエは誠実で立派な騎士であったと、私は主張する。

ツッコミ
 「師匠! カッコいいです!」


−解説−

アルトゥースの宮廷におけるシーン。ケイエはパルチヴァールにこてんぱんにやられてしまうのだが、ヴォルフラムはその彼を(ハルトマンのように)揶揄することはせず、このように弁護する。ヴォルフムラ曰く、ケイエは判定者であり、主君の名誉を傷つけるかもしれないものに対し、常に厳しく振舞うために、不実な人々の恨みを買ったのだという。…確かに、どこの誰だかわからない騎士がのこのこ尋ねてきたら、ふつーの人なら用心してかかると思いますね。円卓の皆さんが暢気過ぎるといいますか、ケイエ一人だけが常識人のような気が…。
そんなケイエを熱心に弁護しているあたり、「オレもそーいう誤解された人の一人なんだ」と主張しているようで、ちょっぴり痛々しいとか。^^;

(第6巻 334節)

そこは四百人の乙女と四人の王妃が捕らえられている、シャステル・マルヴェイレと言う魔法の城である。そこで彼らに与えられたものを私は決してうらやましいとは思わぬ。私も婦人から報酬を得たことがないのだから。

ツッコミ
 「師匠! だんだんフテ腐れに入ってます!」


−解説−

魔法の城に囚われの乙女たちを助けに行ったアルトゥース王以下円卓のみなさんは、みごと遠征に失敗し、何も得られなかった。というシーンである。ヴォルフラム自身も愛の探求に失敗しているので、「彼らと同じく私も何も得ていない。」ということを皮肉っぽく言っている。
自虐ネタで責める芸人じゃあるまいし、何もそこまでネガティブに書かなくてもよさそうなものだが…。

(第6巻 337節)

さて物語の心得があり、韻を重ねたり分けたりして詩句を作ることの出来る人が、以後この物語を続けてほしい。もちろん私の、馬の鐙(あぶみ)の中で動いている足とは、違った足に支えられている口が私に命じるならば、私は喜んであなた方にこの物語の続きをしよう。

ツッコミ
 「師匠! 女性のご機嫌伺いですね?!」


−解説−
馬に、ご婦人と相乗りしている姿を想像していただきたい。鐙の中にあるのは自分の足。それとは違う足はご婦人の足なので、その足に支えられている口とは、一緒に馬に乗っているご婦人の命令を指す。物語のちょうど半分が終わったところで、「私の思い人が命じてくれたら、続きを書きますよ。」と、言っているのである。
なんだかんだ言いつつ、ヴォルフラムは結局最後まで書き上げているので、ご婦人との仲は察してあげてください…。

(第7巻 338節)

この物語は、主人公パルチヴァールと並ぶか、あるいはそれに勝る人たちについてお話することを喜ばないのでは、決してない。たえず自分の物語の主人公だけを口を極めてほめる者は、他の人物を正当に評価できない。

ツッコミ
 「師匠! 生きてた頃はなかなか芽の出ない作家だったんですね!」


−解説−

ヴォルフラムによる物語哲学その2。
というより、同時代の、もてはやされた詩人たちへの皮肉かもしれない。この後、「うそ偽りを述べる詩人ばっかり、持て囃される」ことや、「そのような詩人を喜ばせる」聴衆についての戒めが続く。言葉どおりにとらえれば、自キャラに入れあげすぎ、ストーリーを破綻させる現代の小説家にも通ずる教訓といえよう。

(第10巻 516節)

私の物語をひき続きお聞きになろうとする方は、彼女を咎めることはしないでいただきたい。誰でも自分が何を非難するのか分かっていないで、つまり彼女の心がどんなかを知らないうちから、先走ったことを言ってはいけない。私だってこのきれいな婦人を咎めだてすることはできる。しかし私は、彼女がガーヴァーンに対し怒ってひどいことをしたにしろ、またこれからするにしろ、それに対する非難は一切受けつけるつもりはない。

ツッコミ
 「師匠! 突然ご婦人に対し寛容になったのは、何故ですかッ?!」


−解説−

公妃オルゲルーゼが、愛を求めるガーヴァーン(ガウェイン卿)を冷たく不当にあしらう場面での、オルゲルーゼに対する擁護の言葉。
前半に多かったぼやきが、後半では極端に少なくなり、しまいにこのような、気位の高い貴婦人に対する寛容な言葉へと変わる。前半と後半の間、ヴォルフラムに何があったのか?! …それは読者の想像のままに…。

(第10巻 533節)

私は、ミンネは乱暴にはやる年齢ではないと思っている。それともミンネが人の心に苦しみを与えているのは、ひれはミンネの若さのせいにすべきだろうか。まあ、このミンネの乱暴はミンネの若さのせいとして見逃してやり、ミンネがいい年をしてまだ分別がつかないのだとは考えまい。実際ミンネが原因でいろいろなことが起こった。

ツッコミ
 「師匠! ふつーに自分の思い話になっちゃってます!」


−解説−

なかなか振り向いてもらえないオルゲルーゼのために苦労するガーヴァーンについて語るシーン。ヴォルフラム的恋愛論(もちろん、たっぷり2ページは語ってくれている)の一部。ガーヴァーンについてというよりは、自分の恋愛経験を語っているようにしか見えない。^^;

(第10巻 534節)

私はわがガーヴァーン殿をどんなにか解放してやりたいと思うだが、彼がミンネのために喜びを失うのは避けられないのだ。私がいくら言ったところで、私の調停はなんの役にもたつまい。身分の高い男はミンネに逆らってはならない。というのはミンネはまたいつか心の傷を癒すのに力を貸してくれるからだ。

ツッコミ
 「師匠! おめでとうございます!」


−解説−

あれだけ前半でぐちぐち失恋のボヤキを書き連ねていたヴォルフラム、壮大なる物語の終盤に至ってついに達観す。「そう、恋はつらいけど、いつか別の恋によって癒されるのさ…v」
今、読者は、主人公たちとともに幾多の苦難を乗り越え、成長した一人の男の姿を思い描き勝手に感動する。
といいますか、それは、ここまでのボヤきについてこられた読者に許された特権です。

(第14巻 725節)

しかし二人は会話を交わさなかった。ただ互いにじっと見つめ合っていた。もし私がこのような彼らの言葉を学んでいたら、二人がそこで話したことを、イエスであれノーであれ、理解できるのだが。

ツッコミ
 「師匠! なんだか恋の達人っぽい問題発言です!」


−解説−

ガーヴァーンの妹イトニエーと、イトニエーの恋人グラモフランツの、アルトゥースの宮廷におけるラブラブシーン。口付け後の沈黙である。
振られん坊主で愚痴りまくってたあなたに、そんな恋人の会話が分かるんですかい。などとツッコんであげないように。

(第16巻 827節=最終節)

さて、誰にせよその生涯を終えたとき、肉の咎によって魂が神から引き離されることなく、しかも現世の栄誉をも立派に守り得た場合、それはまこと実りある苦労と言える。分別のある立派な婦人方が、私に好意を寄せておられるなら、この物語を語り終えた今、私を一段と尊敬してくれることだろう。特にこの仕事はある婦人のためになされたのであるから、その方はどうか私にやさしい言葉をかけていただきたい。

ツッコミ
 「師匠! 壮大な告白でした!!」


−解説−

この言葉をもって、偉大なる中世ドイツの名作「パルチヴァール」は幕を閉じる。
読み終わった読者の胸には、ある主の感慨が押し寄せることだろう。…つまり何すか。私たちは、物語と一緒にあなたの恋愛日記を読まされていたのでしょうか。…これは公衆の面前で告白するための手の込んだパフォーマンスですか?
願わくば彼に、その功労に相応しい報いがありましたことを。




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