ヴォルスンガ・サガ/ワルタリウス

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ヴォルスンガ・サガ

―グラムの鋳造とファーヴニル退治―


シグルズは、レギンを養い親()とした。
レギンはシグルズに、彼の本当の父親が有していた財産のことを語り、王に馬を一頭くれと言ってみるようすすめる。シグルズはそのとおりにし、王の持ち物の中から好きな馬を選ぶ許可を得る。馬を選びに森に出かけると、長いひげの老人(シーズスケッグ=オーディンの別名)がおり、よい馬の選び方を伝授してくれた。その方法とは、馬たちを深い水の中に追いやり、最後まで戻ってこなかったものを選ぶというものだった。
選び出されたのは、スレイプニルの血を引くという灰色の馬で、グラニと名づけられた。

馬を手に入れて戻ってくると、レギンがファーヴニルの守る財産を手に入れる話を始める。そいつを倒せば、どんな王よりもすぐれた財産を手に入れられるだろうというのだ。シグルズも、その大蛇のことは知っていたが、なぜレギンがそんなに倒せと勧めるのか分からない。

するとレギンは、ファーヴニルについての話をはじめる。


高貴な家柄の子供は、身分の低い養い親のもとに預けられるのが一般的だったという・
のちに登場するブリュンヒルドがヘイミルを養い親とするのも同。




むかしフレイズマルという裕福な男がいた。長男はファーヴニル、次男はオトル、そして三男がレギンだった。レギンは細工師、オトルは猟師。そしてファーヴニルは体が大きく、残忍だった。
オトルはかわうそに似ていて、口で魚を捕らえては持ち帰った。小人アンドヴァリが、川カマスという魚の格好をして暮らす滝で漁をしていたが、あるときオーディン、ロキ、ヘーニルの三人の神々がそこを通りかかり、オトルを殺して皮を剥いでしまう。

それを知ったフレイズマルは怒り、息子の生皮を覆い尽くすほどの金を代償として差し出さなければ、神々を殺してしまうぞと脅した。
困ったロキは滝へ行き、漁の網でアンドヴァリを捕らえて、身代金として小人の財産をぜんぶ奪い取ってしまう。小人のはめていた指輪もだ。
アンドヴァリは去り際、その黄金を手にするものは誰でもそのために死ぬことになるのだと言い捨てて、去ってゆく。

神々は奪った黄金をフレイズマルに差しだしたが、その黄金に目がくらんだ息子ファーヴニルによって、フレイズマルは殺されてしまうのだ。(小人のかけた呪いのとおりに。)
レギンは分け前をもらえなかった。ファーヴニルは誰にも黄金を渡したくないあまり、巨大なヘビに姿を変え、宝の上にとぐろを巻いているのだ。

話を聞いたシグルズは、その竜(※それまで”大蛇”ormr と書かれていたものが、ここではじめて竜 dreki に変化する)を倒して欲しければ、剣を作って欲しいと頼む。だが、レギンの作る普通の剣は、シグルズの力の前にはすぐに砕けてしまう。

そこで彼は母のところへ行き、父の折れた剣の破片をもらい、レギンに渡す。レギンと弟子たちに打ち直されたその剣は、まるで刃から炎が燃え立つようだったという。また、川に流れる毛糸の束にさっと触れると、毛糸を真っ二つにしたという。

シグルズが剣に満足したと見るや、レギンはすぐさまファーヴニル退治へとせかすが、シグルズはまず父の仇を討ちたいと言う。
旅立つ前に、彼は母方の叔父、グリーピルのもとへやってきた。彼は人の運命を見通す力を持っていた。シグルズはそこで、いずれ自分の身に起きることをすべて知ったという。(それでも未来は何一つ変わらないのが、サガのお約束である…)

****

シグルズは、母と再婚したアールヴ王のところへ行き、軍隊を整えてもらい、父の仇であるフンディングの息子たちを倒しに行く。途中、嵐に襲われるが、その中、フニカルと名乗る一人の男が、船に乗せて欲しいと現れる。男が船に乗ると嵐は静まり、陸に着いたときには、すでに姿が消えていた。(物語中では語られないが、この男はオーディンだったとされる)

シグルズたちはリュングヴィ王のもとで大暴れし、たちまちにして激しい戦いとなる。この戦いでリュングヴィ王と、その強大ヒョルヴァルズが倒され、生き残っていたほかのフンディングの息子たちもみな倒れた。

父の仇を討って帰国したシグルズを待っていたのはレギンで、約束どおりファーヴニルを倒しに行けと繰り返す。
シグルズは、休むまもなくファーヴニルのいる場所へ向かう。

そこは岩山で、ファーヴニルが水を飲みに這ってくる跡が深々ときざまれている。レギンは、その這い跡に溝を掘り、中に潜んでいて、水を飲んでいるすきに腹を刺して殺せと教える。
レギンが隠れてしまったあと、シグルズがひとりで穴を掘っていると、またもオーディンが長いひげの老人の姿で現れ、流れ出した血で溺れないよう、もっとたくさん溝を掘り、竜の心臓を一突きにするように、と教える。

シグルズが穴に隠れていると、ファーヴニルがやってくる。彼は教えられたとおり、腹の下からファーヴニルの左腕の付け根を突き刺して倒す。死を予感したファーヴニルは彼に名を尋ねるが、死に瀕したものの言葉が呪いになることを知っているシグルズは、正直に答えない。
しかしファーヴニルがウソを見抜くと、シグルズは自分の名と、父親の名を答える。しかしファーヴニルは、呪いはかけない。レギンが自分の命を狙ったことも知っていた。むしろ好意的に、自分の持っている黄金はお前の命も奪うだろう、と告げて息絶える。

竜が倒れたのを知って戻ってたレギンは、兄が死んでいるのを見て、シグルズを責めるふりをする。ファーヴニルの血を飲み、心臓を焼いて食べさせて欲しいと頼むので、シグルズは自分の持っていたリジルという剣で竜の心臓を切り取り、火をおこした。焼き具合を確かめようと心臓に触れ、その指を口の中に突っ込んでなめたところ、突然、木に止まっている小鳥たちの話し声が耳に届く。

声は、レギンが裏切ろうとしていることや、心臓を食べると賢くなれること、フィンダルフィヨル山に眠るブリュンヒルドのことなどを告げていた。

シグルズは即座にグラムを鞘から抜き、レギンの首をはね、ファーヴニルの心臓の一部を食べると、残りは取っておくことにした。
また黄金をグラニに積み、自分も乗って、ヒィンダルフィヤル山へ向かった。





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