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ラー Ra

古代名:ラー、ラーウ/ギリシア名:-/別称・別綴り:レー(Re)、仏語:Rê、アス
性別:男性


――――エジプトの大地を照らす不滅の太陽

主な称号
天と地の創造者、光の主人

主な信仰
言わずと知れたエジプト神話の主神。ただし古代エジプト時代を通して常に主神だったわけではない。これについては後述。

●太陽神として
らーさま
太陽のことを「ラー」と呼ぶように、ラーは太陽そのものであり、朝に東から昇り、夕べに西の空へ沈んでいく、一日のうちに死と再生を繰り返す不死の存在でもある。そのため古代エジプトの宗教観には強い影響力を持っており、死者の書には、太陽神の死と再生、および死者による祈りや太陽神の援助を請う祈りが、くりかえし登場する。
また、死者の書自体、本来の名前は「日の元に出づるための書」であり、夜明けとともに復活する太陽のように魂も復活するように、との願いを込めた呪文書で、その最初の呪文は太陽賛歌となっている。

>>参考 「死者の書〜全章リスト」

太陽そのものであるラーは、現代までひたすら農業国でありつづけたエジプトにとっては重要な神であり、たとえ民衆の人気を失っても、古代エジプト宗教が捨て去られても、決して存在として消えることはなく、その祭儀は形を変えつつ現在も一部農村に生き残っているという。


●太陽信仰とピラミッド時代

太陽に先端を向ける正四角錐は、太陽の光と輝きを表す。エジプトといえばピラミッドだが、そのピラミッドも、オベリスクも、ベンベン石も、すべては太陽信仰の象徴である。太陽神ラーを主神とする神話体系が作られ、王をラーの息子と位置づけた時代はちょうど巨大ピラミッド建造全盛期であり、国家事業としての大規模な建築が行われるとともに、事業に駆り出された人々に、太陽信仰を浸透させることにもなった。

ただしラーへの太陽信仰は、ピラミッド建造が頂点に達した第四王朝をピークとして、その後は徐々に衰退していく。そして中王国時代になると、それまでの太陽神ラーに変わり、新たな太陽神、アメンが信仰されるようになる。アメン神とラー神を習合させたものが「アメン・ラー神」。また、アクエンアテンが宗教改革を行った一時期だけは、どちらでもない太陽神アテンが信仰されていた。


●宇宙の起源神として
ラー・ホルアクティ
ラーが太陽自身ということは、もちろんラーが誕生するまで世界に光はなかった訳で、ラーは「闇より生まれし光」と呼ばれる。宇宙の魂であり、宇宙の体現であることから、原初の神アトゥムと同化した「アトゥム・ラー」の姿で登場する。

既存の神話ではアトゥムが最初にあり、そこから最初の男女神、シュウとテフヌトが生まれたことになっていたワケだが、ラー神の神官団が、どーしても他の神の上位に立ちたくてラーを原初の神にしようとした結果、アトゥムの中に混ぜ込んだのかもしれない。(そんな政治的後付けの香りのするところが、ラー様神話の素敵なところだ。)

また、地方の神々が、生き残りをかけて「ウチの神様は実はラー様の化身・分身なんですよぅ!」と、こぞって傘下に入ったため、○○・ラーとか、ラー・○○、といった、ラーと同化した神名は非常に多い。ラーはエジプト中の、ほとんどの神々と結びつき、普遍的な太陽信仰の象徴として多くの聖域を持つ。

※右図は、ラーのポピュラーな形態の一つ「ラー・ホルアクティ」。


●大蛇アポピスと戦う者として

光の象徴であるラーは、闇の象徴である混沌の蛇アポピスの宿命のライバルにして相補関係にある。光のない夜の時間、地平の下をゆく太陽の舟は、つねにアポピスに襲われる危険とともにあった。すなわち光と闇の神々が、毎晩宿命の戦いを繰り広げていたのである。なんという中二病設定。
太陽神ラーの化身たる雄猫についてはアポピスの項を参照。

●太陽神ラーの別名

第18王朝のトトメス3世以降、新王国時代の王墓に書かれていた「太陽神の讃歌」もしくは「ラーへの連祷」などと呼ばれる呪文によれば、冥界における太陽神ラーには74の別名と姿があることになっている。
これは「死者の書」の中に、死者が様々なものに変身していく呪文があるのと似た概念で、冥界を通過しながら太陽神が様々に変容していくという内容になっている。
74の名前は、以下のようなものになっている。(邦訳出典は「神々と旅する冥界 来世へ」)
★印をつけたものは、別の神の名前としても存在する名称。この呪文では、死者の書の冥界シーンに登場する他の神々もラーの変身した姿として解釈されていると言える。

(1)シュウ ★
(2)アトゥム ★
(3)ラーの魂
(4)闇の者
(5)魂の中の風
(6)魂を守る者
(7)洞窟の先頭にいる者
(8)一つとなったものジェバア
(9)ネトゥティ
(10)アブゥ魚のそれら
(11)嘆く者
(12)ホルス ★
(13)イシス ★
(14)ゲブ ★
(15)運命(シャアウ) ★
(16)デバァティ
(17)ネコの者
(18)西方の第一人者(ケンティ・アメンティウ) ★
(19)喪に服す者
(20)西方(アメネト) ☆西方の神アメンティと同じ意味
(21)旅する者
(22)尊ぶべき(?)者
(23)大地の供給者
(24)再度組み立てられた四肢の者
(25)冥界の彼
(26)隠された遺体
(27)イウティ
(28)光り輝く目が語る彼
(29)偉大なる猫
(30)高められし者
(31)隠れたる者(アメニィ) ☆アメンの名前と同じ意味
(32)身体をつくりし者
(33)入ってくる者、歩む者
(34)タァチェネン ★
(35)しばる者
(36)暗い顔
(37)大地を新しくする者、二つの神殿(アトゥム)
(38)杭で罰する者
(39)怒った顔
(40)円盤のラー
(41)変容する者(ケプリ) ★
(42)ヌン ★
(43)ネフティス ★
(44)ヌゥト ★
(45)テフネト ★
(46)変容する者(ケプリ) ★2回め
(47)遺体に光を与える者
(48)洞窟にある者
(49)偉大な牡ヒツジ
(50)神聖な目
(51)腐敗した者
(52)燃える者
(53)休む魂
(54)息をさせる者
(55)放逐者
(56)隠れた一員
(57)変容する者(ケプリ)  ★3回め
(58)双子の者
(59)高き魂
(60)遠き魂
(61)高貴な者
(62)輝く角
(63)明るくする者
(64)善行の者
(65)祝う者
(66)隠れたる者(セシェニィ)
(67)光り輝く者
(68)暗闇の主人
(69)力の主人
(70)永遠なる者
(71)冥界のマントヒヒ
(72)見守る者たち
(73)大釜の者
(74)大地に炎を放つ者


神話
・その時代の政権によって立ち位置が変わります。ものすごくざっくり言うとこんな感じです。

<古王国時代>
ラー神の本拠地ヘリオポリス付近に王権の中心地がある→ラー様age

<中王国時代>
ラー神の本拠地から中心地が次第に遠ざかる→他の神様age

<新王国時代>
中心地がナイル上流のテーベに固定される→テーベの守護神アメンage、ラーはその一部として習合合体させられ「アメン・ラー」に

・とにかく分身が多い。他の神々との結びつきが激しく多い。太陽神様は誰とでも合体できます。

・後世の神話(前述の新王国時代あたり)では、老いぼれて他の神様たちに迷惑をかけたとされ、ギリシャ神話のように不老不死とは考えられていなかったことがわかります。

・太陽は居ないと困るお方なので、ひたすら皆に守られています。太陽の舟とか。

・夏の太陽は暑くて憎らしいが、春の太陽は愛される。朝は生まれたてなので若いが、夕方地平に沈むときは老いている。地平の下の冥界においては様々に動物に変身している。そんなお方。

・元旦の守護者。


聖域
ヘリオポリス、また他の地域としてはヘルモポリス、デンデラ、アブ・グラブ、テーベなど主要な多数の都市に神殿あり。
また外国ではビブロスで信仰されていた証拠がある。

DATA

・所有色―赤
・所有元素―火
・参加ユニット―ヘリオポリス九柱神<アトゥム・ラー、ヌト、ゲブ、シュウ、テフネト、イシス、オシリス、セト、ネフティス>(※ヘリオポリス九柱神はメンバーが替わっている場合あり)
・同一化―たくさんありすぎて…。
・神聖動物―一般的には牛(ブキス)。アメンとの習合時には羊。鷹の姿をとるが鷹は神聖動物ではない
・装備品―常に太陽円盤。ウアス杖、フラジェルムなど王の装備品も持つ。
・関係づけられた樹木―シカモア


◎補足トリビア◎

1954年5月、ギザのピラミッド東側から発見された「太陽の船」は、発見当時、1200を越えるパーツに分解されており、組み立てに約10年を費やした。喫水が1.5mしかなく、実際の河の運行には使えなかっただろうということから、「ラーが東の空から西へと向う太陽の船に似せたもの」「王の魂が空を運行するための船」という説がある。

なお、日本においては何故かこのクフ王の舟のうち近年掘り出された二隻目のほうは吉村作治の発見したものということになっているが、実際は、第二の舟は1954年、エジプト考古庁によって第一の舟と同時に発見されていた。また、1985年にナショナル・ジオグラフィック協会とエジプト考古学協会の合同チームが第二の船の穴に入って調査し、その下に解体された木片が散らばっていることを確認しており、その後に地上から電磁波で内部を確認したのが早稲田の発掘チームだった。

参考>> クフ王の「太陽の船」復元について <太陽の船ではない可能性を、お忘れなく!>


◎どうでもいいネタ◎

よく分かる習合図解〜「アメンと、合体したい…」

◎時事ネタ◎

古代エジプトで父の日 Father's Day −父なるラー神に礼拝せよ!


【Index】