ヴォルスンガ・サガ/ワルタリウス

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ここで、ようやく本来の主人公、シドレクが登場する。

このときのシドレクはまだ若く、ベルンの王としてイタリアに領地を持っている。国を追われる以前のエピソードだ。
やっぱり若いと、血の気も多いのだろう。若気の至りというべきか、シドレクは、自分のもとに集った11人の勇士が、イーズンク王のもとにいる12人とどちらが強いのかを競いあおうとする。
このイーズンクなる人物は、他の物語には登場せず、「シドレクス・サガ」のみに登場する人物のようだ。「ニーベルンゲンの歌」のフォルケール同様、作者のオリジナルキャラだったのだろうか。

ちなみに、イーズンク王のもとにいる12人の勇士とは、11人の王子+旗手のシグルド。
シドレク側の11人には、ヒルデブラントなどのほかにグンナル(グンテル)やヘグニ(ハーゲン)といった名前が入っている。このグンナル&ヘグニはニフルンガ(ニーベルンゲン)の国の王族となっているから、「ニーベルンゲンの歌」よりは「エッダ(アトリの歌)」など古い神話に近い存在なのだろう。
この11人に本人を加えて12人。同数での勝負になる。

各々の王に仕える勇士たちはそれぞれに戦い、技を競い合うが、雌雄は決さず、いずれとも力は同等である。然るに、それぞれの代表者であるシグルドとシドレクが決着をつけるために戦うことになるのだが、シドレクがシグルドに勝つためには、魔剣ミームングを用いなければならないという特殊な事情があった。この剣だけが、シグルドの浴びた竜の血の魔力を無効化出来るのである。

ミームングは、もう一つのディートリッヒ伝説では、ディートリッヒの仲間のひとりヴィテゲが持っている剣である。そちらのミームングも、やはり特殊な剣として扱われている。この名前の剣には、様々な物語があるようだ。

剣の効果を知っているシグルドは、「正々堂々と戦うように」と、シドレクに、ミームングなしでの試合を要求する。しかしシドレクは、ミームングなしに勝てないことが分かっているので一計を案じた。
どうやったかというと、剣は地面に突き立てられ、この剣の柄に背をもたせかけて戦ったのである。
彼は「ミームングを手にしない」ことを誓ったのであって、「ミームングに触れない」ことは、誓わなかった。
そんな無茶な、と思うのだが、よく考えてみると、剣に背中をつけて戦うなんてのは普通の人間に出来ることではないので、シドレクが強かったことは違いない。嘘はついてないし。(詭弁だが)

【ただし、この物語には細部の異なる別バージョンもあり、シグルドが勝つ展開もある。地域によって贔屓の英雄が違っていたために、物語が成立した場所での民衆の人気を反映した味付けになっているのだとか。】


戦いのあと、死力を尽くして戦いあった双方の勇士は、仲良くなって友好を交わした。中でもシグルドとシドレクは、拳で語り合っただけに意気投合した模様。
かくしてシグルドはシドレクの部下となり、ともに、グンナルの国ニフルンガル(ニーベルンゲンのこと)へと向かうことになる。ここで彼は「ニーベルンゲンの歌」と同じくグンナルの妹、クリエムヒルトと結婚することになるのだ。





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