サイトTOP別館TOPコンテンツTOP

第百二十五章:2

ヌウのパピルスより


★注意★
エジプト展のパネルや図録などで、なぜかここの「否定」が否定告白として扱われていることがありますが、この前段の否定は35しかなく、神々への呼びかけを伴わない。"42の否定告白"はこのあとに続く部分です。



 印璽監督院の監督にして、勝利を得たるヌウが、進んで二重マアトの広間にいたり、従来行える、所有する罪より放たれんとし、また神々の顔を見んとする時に口唱せらるべきものなり。勝利を得たなオシリス=アニ曰く、
 『偉大なる神、汝、二重マアトの主よ、今、汝を敬礼し奉る。おお、わが主よ、我は汝に来たれり、而して我をここへ至らせるは、汝の美なる諸点を見んがためなり。我は汝を知る、また、我は汝の名を知る。また、我は、四十二の神、即ち汝とともに二重マアトの間に存在し、罪びとの看守として生活し、人の命がウン=ネフェル(オシリス)の前にて計算せる日に、罪びとの血を食らいて生まれくる神々の名を知る。
 誠に、レクティ・メルティ・ネブゥ・マアティ<即ち二つの眼を持てる二人の姉妹、二重マアトの貴女>は、汝の名なり。
 誠に、我は汝に来れり、而して我は汝にマアトを招来せり。

 1)我は汝のため、邪悪を破壊せり。
 2)我は人に対し、邪悪を行わざりき。
 3)我は家族を圧制せじ。
 4)我は正義と真理<マアト>の代わりに悪を行わざりき。
 5)我は我がために過度の労働が行われんことを、第一の詮議となさず。
 6)我は崇められて名誉を受けるため、我が名を提出せしことはなし。
 7)我は僕を虐待せしことは無し。
 8)我は心の中にて神を侮りしことなし。
 9)我は支配せらる者たちより、財産を搾取せしこと無し。
 10)我は神々にとって忌むべきことをなさず。
 11)我は主人をけしかけ、その僕に害を加えしことなし。
 12)我は苦痛を生じしめることなく、何人をも飢えに苦しませず。
 13)我は何人をも号泣させしことなく、虐殺を行いしことは無し。
 14)我は我がために虐殺を行えと命じたことはなし。
 15)我は人々に苦痛をこうむらせしことなし。
 16)我は諸々の神殿より奉納物を窃取せしことは無し。
 17)我は神々の菓子を窃取せしことは無し。
 18)我はカーに捧げられし菓子を窃取せしことは無し。
 19)我はみだりに迎合することなし。
 20)我は神々の聖地にて自らを汚せしことなし。
 21)我は陸地を盗みたることなし。
 22)我は他人の田畑を横領せしこと無し。
 23)我は秤の目方をごまかせしこと無し。
 24)我は買い手を欺いたことなし。
 25)我は子供らの口より乳を奪い去りしことなし。
 26)我は牧草地の家畜を追い払いしことなし。
 27)我は神々の猟場にて鳥を罠にかけしこと無し。
 28)我は同じ種類の魚で作れる網もて、魚を捕らえしことなし。
 29)我は流るる水を遡らんとせしことなし。
 30)我は流水の運河を故意に決壊せしことなし。
 31)我は火の燃ゆべきときに、それを消したることなし。
 32)我は行うべき神々の祭りを疎かにはせじ。
 33)我は、神々の財産中より家畜を追い払いしことなし。
 34)我は出現したる神を追い払いしこと無し。

↑「我は…」で始まる文章は、35しかない。あとにつづく42の否定告白と一部かぶっている。

 我は清浄なり。我が清浄はステン-ヘネン(ヘラクレオポリス)の都にある、その大いなるベヌウ鳥の清浄なり。
 何なれば、視よ、我は大気の神の鼻なればなり。
 大気の神とは、此の世の聖なる主の御前にてペレト季(種を蒔く時期のこと)の第二月の末に、ラーの眼(ウジャト)がウヌ(ヘリオポリス)に満つる日に、全ての人類の生活せしむるもの、即ちこれなり。
 我は、ラーの眼がウヌに満つるとき、之を見たり。
 願わくば、此の世においても、また二重マアトの広間においても、悪のために我が倒れしことなかれ。
 何となれば我、然り我は、其処に在りて、大いなる神の随従者たる神々の名を知ればなり。』


このあとに、本番の42の否定告白が続きます。
物語は、ここでオシリス神に直接35(区切り方によっては34)の申し立てをしたあと、42柱並んでいる審判者の神々に、その神の担当する罪を一つずつ否定していくという流れになってます。

**************
以下、新しい英訳版からの訳し直し。参考までに
意味がよくわからんところも多くてかなりテキトーな訳になってます。意味が昔の訳とは間逆になっているところなんかもある…。
**************

あなたに拝礼する、偉大なる神、正義を統べるお方。
あなたの前に来たれり、わが主よ。あなたの美を見るためにここへ来たれり。
我は知る、汝を、汝が名を、汝が法廷におわす42の神々を。彼らはそれらの上に座する、悪を大事にするものの。そして血を飲み干すもの、汝の立会いのもとにある最後の審判の日に。

見よ、真実を統べるものは汝の名である
見よ、我は汝がもとへ来たれり、汝がもとへ真実をもたらせり。

01 我は偽りを拒絶せり。
02 我は仲間を搾取せざりき。
03 我は真実の場において悪をなさざりき。
04 我は悪しきことを学ばず。
05 我は悪をなさざりき。
06 我は毎日、我のために行われるが以上の労働を行わざりき、奴隷を支配するもの。
(奴隷を酷使していない?)
07 我は孤児の財産を奪わざりき。 
08 我は神々の嫌うことを行わざりき。
09 我は奴隷を害せざりき。
10 我は人を傷つけざりき。
11 我は飢えをもたらさざりき。
12 我は人を泣かさざりき。
13 我は殺さず。
14 我は殺すことを命じず。
15 我は人を苦しめず。
16 我は神殿に与える食料を減らさざりき。
17 我は神々のパンを壊さざりき。
18 我は精霊たちの食物を持ちださざりき。
19 我は性交せざりき。 (神殿の中で?)
20 我は無作法にふるまわざりき。
21 我は食料の供給を減らさざりき。
22 我は土地をごまかさざりき。
23 我は土地を侵さざりき。
24 我はわいろをつかわざりき(?)
25 我は計量をごまかさざりき。
26 我は子供の口からミルクを奪わざりき。
27 我は神々の家畜を奪わざりき。
28 我は神々の守護する鳥を罠にかけざりき。
29 我は神々の魚をすなどらざりき。
30 我はその季節(?)に水に潜らざりき。
31 我は流れる水の上に堤防を築かざりき。
32 我は燃え盛る火を急激に冷まさざりき。
33 我は供物を納めるべき日を無視せざりき。
34 我は神々への供物の中から取らざりき。
35 我は神々の決定に反対せざりき。

我は純粋なり、純粋なり。我はヘラクレオポリスの不死鳥の如く純粋なり。…(以下略)



戻る